経営vs労働組合!塩田武士が『罪の声』の4年前に描いた、リアルでおもろい“労働組合エンタメ”

2017年03月15日
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日販 ほんのひきだし編集部 「新刊展望」担当
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最新刊『罪の声』が各方面で絶賛され、本屋大賞にもノミネートされるなど、いま大注目の作家、塩田武士さん。そんな塩田さんが2012年7月に発表した小説『ともにがんばりましょう』が、このほど文庫になりました。

新聞社の「労働組合」を舞台に、深夜手当のカットを目論む会社側との真っ向勝負を描くというユニークぶり。そして4年も前に書かれた作品ながら、『罪の声』に通じる塩田さんの魅力がバッチリ詰まっています。

今回は、『ともにがんばりましょう』を担当した編集者の方から、作品ガイドを寄せていただきました

『罪の声』にハマった方も、これから読もうという方も、『ともにがんばりましょう』をぜひお楽しみください。

ともにがんばりましょう
著者:塩田武士
発売日:2017年03月
発行所:講談社
価格:799円(税込)
ISBNコード:9784062936033

 

塩田武士さんの取材力が存分に発揮された極上のエンタメ

『罪の声』の勢いが止まりません。昨年8月に刊行されるや、SNSをはじめ各メディアで話題になり、作家の佐藤優さん、ジャーナリストの青木理さん、オールナイトニッポンのパーソナリティーも務める弁護士の角田龍平さんなどに絶賛されて一気に注目を集め、昨年末には「週刊文春ミステリーベスト10」第1位にも選ばれました。

ご存じの方も多いかもしれませんが、『罪の声』は昭和最大の未解決事件ともいえる「グリコ・森永事件」を材にとった小説です。主人公の曽根俊也が、ある日、自宅で見つけたカセットテープには、幼い頃に録音された自分の歌などに続いて、「ばーすーてーい、じょーなんぐーの、べんちの、こしかけの、うら」との台詞が。それは、31年前に発生した未解決事件で恐喝に使われた録音テープの音声と、まったく同じものでした。このテープが吹き込まれた経緯を調べる俊也と、未解決事件の特集担当を命じられた新聞記者、阿久津英士の二人が、事件の真相と、その背後にあった家族の物語に迫ってゆきます。

『罪の声』が高く評価をされたのは、この作品が小説でありながら事件の核心に迫ってゆく経緯や、当時の関係者の証言、犯人像などがあまりにリアルで、どこまでが本当でどこからが創作なのかわからなくなる、その圧倒的なリアリティにありました。作者の塩田武士さんは元神戸新聞の記者で、新聞社で培われた取材力を存分に活かして本作を書き上げたのですが、しかし、塩田さんがその取材力を十二分に発揮したのはこの作品だけではありません。

このたび文庫化された『ともにがんばりましょう』は、塩田さんのデビュー3作目にして、その実力を大いに示した傑作です。舞台は新聞社の労働組合。極度のあがり症の記者、武井涼が、希望する文化部への異動をエサに労働組合の執行委員に誘われ、未知の世界に足を踏み入れるところから始まります。

組合執行部を描いた小説と聞いて、難しそうな説明や、怒声が飛び交うシリアスな作品を想像するかもしれませんが、本書はまったく違います。クセの強い執行部の「7人の侍」たちが経営陣と交わす激論は、真剣ながらもついつい笑ってしまう関西ならではのユーモアに満ちていて、読み進めるうち優れた新聞を作りたいという社員たちの強い気持ちに思わず胸が熱くなります。みずからの執行委員経験をこの作品につぎ込んで書かれた塩田さんの極上エンターテインメント、ぜひぜひ、ご一読のほどを!

(文・講談社 第五事業局 講談社文庫出版部 堀彩子)

 

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