神永学さん

売れっ子作家は、デキるビジネスマンでもある!?:神永学さんの仕事場訪問【前編】

2017年03月08日
楽しむ
日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当 猪越
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「心霊探偵八雲」や「怪盗探偵山猫」「浮雲心霊奇譚」など数々のシリーズで高い人気を誇る神永学さん。エンターテインメント性あふれる各作品の充実ぶりはもちろん、この春には2か月で3冊の新刊が刊行されるなど、その精力的な仕事ぶりにも目をみはるばかりです

どんな環境で、どのように創作に勤しんでいらっしゃるのか。神永さんの仕事場にお邪魔しました。

神永 学 Manabu Kaminaga
1974年、山梨県生まれ。日本映画学校卒。2003年『赤い隻眼』を自費出版。同作を大幅改稿した『心霊探偵八雲 赤い瞳は知っている』で2004年プロデビュー。代表作「心霊探偵八雲」をはじめ、「天命探偵」「怪盗探偵山猫」「確率捜査官 御子柴岳人」「浮雲心霊奇譚」「殺生伝」「革命のリベリオン」などシリーズ作品を多数展開。他に『イノセントブルー 記憶の旅人』『コンダクター』がある。

 

人事・総務の経験を生かし、スタッフをとことん鍛える

――ご自宅とは別に、事務所を構えていらっしゃるのですね。

作家としては珍しいと思うのですが、僕は会社の一従業員という扱い。なので、お給料制です。3人いるスタッフも正社員で、それぞれ目標があり、査定があり、いわゆる普通の“会社”ですね。

事務所の朝は、毎日朝礼から始まります。司会者を中心に体操をしてから、それぞれ業務報告を行います。司会は持ち回りで、時事ネタと絡めて「今日のひとこと」を話します。例えば「こんな事件がありました。背景にはこんな事情があります。それを自分たちの仕事に置き換えてみたら……」といった話をします。その後全員で、「それは違うのではないか」「こんな考え方もできるのではないか」などという議論もします。

――結構時間をかけていらっしゃいますね。

長いときには1時間くらいかかりますが、それを続けると、みんなが時事ネタに目を向けるようになりますし、仕事のやり方や向き合い方の意思統一ができるんです。

議論をすることも大事です。それをすることで、それぞれが自分の意見や意思を持つようになりますからね。スタッフには「一人一人違う考え方でいいんだ」といつも言っています。

お昼は食事をしながら1時間映画を見ます。ノンジャンルでいろいろなものを見て知識を吸収するようにしています。

 

社外秘のスタッフ必読本リストは、なんと150冊!

――人材育成面が充実していますね。

もともと企業で人事や総務をやっていたので、その辺りは厳しくしています。

「打ち合わせに参加できるように、これだけは読んでおいてね」という「必読本リスト」もあります。現在150冊ほどのリストで、それをどのくらい読んでいるのかも査定に響きます。著名な作家さんのことを理解していないと、打ち合わせで「この作家さんのこの作品が」と話していても、「何それ」という状態になってしまう。好き嫌い関係なく、文芸と呼ばれるものからエンターテインメント、ライトノベルまでまんべんなく読んでいます。

――ぜひ見せていただきたいのですが、そのリストは社外秘ですか?

外には出していないです。書店員さんにも欲しいと言われたりするのですが(笑)。週末になると、スタッフが書庫からごそごそと本を持って帰っています。

――リストの本は事務所に揃えてあるのですね。

そこは作家の事務所ですからね(笑)。活躍されている作家さんにはそれぞれの素晴らしさがあるので、代表作や受賞作はもちろん、話題作や何か引っかかる作品、あとは、僕が読んで「おもしろくないな」と思ったものをあえて渡すこともあります。

その本がおもしろいかどうかは、読んだ人の生きてきた過程が大きく影響します。僕には合わなくても、ほかのスタッフが読んだら「すごくおもしろかった」ということもある。そこで話を聞くと、「こういうふうに感じるのか」と発見があって、頭の中がフラットになります。一つの考えに囚われると、書くときにもいろんな作品に取り組めないので、いろんな考え方を取り入れられる環境づくりをしています。

――かなり鍛えていただけそうです……。

わりと厳しいことも言いますが、それもスタッフに対する愛情があってのことです。ただし、嘘をつくことと、逃げることは絶対にだめです。それをすると僕が怒るのをみんな知っているので、誰かがミスをしたときに、別のスタッフが指示を出していたとしたら、「すみません、それを指示したのは私です」と必ず先に報告してきますね。「私、知~らない」みたいな顔をしていると、あとですごく怒られるので(笑)。でも正直に言ってくれれば、僕は絶対に怒らないです。

「嘘をつかない」「逃げない」「自分の意見をきちんと言う」。合っている、間違っているではなく、そこは仕事としてきちんとやるべきだと思っています。それはサラリーマン時代からずっと変わらないですね。

――神永さんの、ビジネス書や読書術の本も読みたくなりました。

その予定はありませんが(笑)、バイト時代やサラリーマン時代の友達と飲んでいて、「あの頃誰が一番怖かったか」という話になると全員一致で僕と言われます。それでもいまだに誘ってくれるのは、愛情をもって厳しくしていたのは伝わっていたからなのかなと。

仕事の面でしっかりとしたコミュニケーションがとれていると、その後の関係性も途切れません。仕事は厳しく、楽しむときは楽しむ。事務所はフレックスで、仕事が終わればさっさと帰りなさいというスタンスです。プライベートも大切にする。その方が仕事もはかどりますからね。

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