佐々涼子さんが語る『紙つなげ!』― あの日の思いを読み継ぐために

2017年02月13日
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日販 ほんのひきだし編集部 「新刊展望」担当
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〈佐々涼子さんの『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』の文庫版がこのほど発売されました。単行本刊行時(2014年7月)に開催されたトークショーの模様を再掲載します。〉

紙つなげ!彼らが本の紙を造っている
著者:佐々涼子
発売日:2017年02月
発行所:早川書房
価格:799円(税込)
ISBNコード:9784150504861

地元のため、そして本を待つ読者のために!津波で壊滅的被害を受けた製紙工場の復興の軌跡を徹底取材した、傑作ノンフィクション。

Hayakawa-Online『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』より)


佐々涼子 Ryoko Sasa
1968年生まれ。早稲田大学法学部卒業。日本語を教師を経て、ノンフィクションライターに。新宿歌舞伎町で取材を重ね、2011年『たった一人のあなたを救う 駆け込み寺の玄さん』を上梓。2012年『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』で第10回集英社・開高健ノンフィクション賞を受賞。

 

『紙つなげ!』 あの日の思いを読み継ぐために

東日本大震災で被災し、絶望的な状況に陥った日本製紙石巻工場。出版社と本を待つ読者のために力を尽くした、その奇跡の復興を描く佐々涼子著『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』(早川書房)は大きな感動を呼びました。本稿は、その刊行を記念し、2014年7月26日にパルコブックセンター吉祥寺店で開催されたトークショーを採録の上、再構成したものです。

(右)ノンフィクションライター 佐々涼子さん
(左)日本出版販売株式会社 販売企画部MD企画課長 古幡瑞穂

 

それぞれの東日本大震災

――早速ですが、お二人の3・11、東日本大震災時の様子を伺いたいと思います。佐々さんはいかがでしたか。

佐々 私は横浜の高層マンションに住んでいまして、14階なんです。ちょうど仕事をしていたのですが、ものすごい揺れでパソコンが落ちて、原稿がみんな飛びました。テレビを見たら津波の映像が繰り返し流れている感じでした。

古幡 私は日本出版販売、通称「日販」という出版取次の会社に勤めております。取次というのは、本の卸しです。いま日本にある約3,700社の出版社と、1万を超える書店の間をつないで、商品をお届けするのが主な仕事です。今日はおそらく『紙つなげ!』のタイトルにちなみ、つないでいただいた「本の紙」の流通部分を取次が担っているということで、お声が掛かったのだと思っております。

日販は本社が御茶ノ水にあります。ちなみに、道路をはさんだ目の前に御茶ノ水ソラシティという新しいビルが建っていて、そのビルに日本製紙の本社が入っています。常時300種類以上の紙のサンプルに触れられる「御茶ノ水ペーパーギャラリー」も設置されています。

3・11のお話をさせていただくと、私たちのビルは21階建てですが、私の当時いたフロアが9階で、たまたま中央部分が一番揺れる構造のビルだそうで、本当にひどく揺れました。机が吹っ飛んだり、天井の一部が落ちてくるのを目の前で見ました。

それよりもひどかったのが、当社の倉庫の状況です。倉庫には、出版社からお預かりしている本が多数在庫されていて、そこから本がピッキングされ、書店ごとに発送されていきます。その商品が、棚ごと全部倒れてしまった状態でした。特にひどかったのは、スプリンクラーが稼動してしまったことです。場所によっては本がずぶ濡れになってしまったところもあります。

東日本大震災時の日販・王子流通センターの様子(写真上下2点とも)。段ボールが散乱している様子がうかがえる

▲棚が倒壊し、本がすべて床に投げ出されてしまったフロアも

営業は、当日から東北を中心とした書店さんがどういう状況なのかという調査に入りました。もちろんすぐにはわからないですが、無事な書店さんに関してはとにかく落ちた本を詰めて一日でも早く営業できるようにしなければいけませんし、その書店さんに品物を送る倉庫を一刻も早く立て直さなくてはなりません。そのため、震災翌日の土日も社員総出で復旧にあたりました。

――佐々さんは、前作の『エンジェルフライト』で2年前に開高健ノンフィクション賞を受賞されましたが、そもそも佐々さんはどういった流れでノンフィクションライターになられたのですか。

エンジェルフライト
著者:佐々涼子
発売日:2014年11月
発行所:集英社
価格:605円(税込)
ISBNコード:9784087452525

国境を越えて遺体や遺骨を故国へ送り届ける「国際霊柩送還」という仕事に迫り、死とは何か、愛する人を亡くすとはどういうことかを描く。第10回開高健ノンフィクション賞受賞作。(解説/石井光太)

集英社BOOKNAVI『エンジェルフライト』より)

佐々 私は、大学を卒業後すぐ結婚して子どもができたんです。夫が転勤族だったこともあって、子どもが小さいうちは仕事ができませんでした。会社勤めもしたことがないし、何かやらなきゃと日本語教師の資格を取って、日本語学校の教師になったのですが、子どもが喘息でなかなかうまくいかなくて。お金を扱う仕事はお釣りを間違えるのが嫌だったこともあって(笑)、東京に戻ってきたときに、仕事を探してもなかなか見つからなかったんです。

それが、ある時新聞広告を見て「字だけ書いて暮らしていける人がいる!」と気付いたんです。何かできないかと、まずは「編集の学校」に通い始めました。珍しいですよね、養成スクール出身のノンフィクションライターって(笑)。そこで、お取り寄せお菓子などの記事を書いていたところ、ある日学校の教務の女性が「今日はあなたにうってつけのゲスト講師が来るから、這ってでも来て」と言うんです。行ってみたら、その当時休刊になった「月刊プレイボーイ」の最後の編集長の講義で、「なかなかノンフィクションを書いてくれる作家がいないので、書いてくれる人を待っています。開高賞に応募してね」という話でした。

「塩大福のお取り寄せ記事を書いているのに、なんで私に?」と教務の女性に聞くと、彼女は喪黒福造みたいな人で、「あなたの顔には、ノンフィクションを書くと書いてある」と。それでノンフィクションライターになりました。本当です(笑)。

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