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    〆切に追われている全ての人へ―文豪たちの苦悶のエピソード集『〆切本』が売れた理由

    2016年12月14日
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    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    「どうしても書けぬ」「殺してください」「今夜、やる。今夜こそやる」

    今、作家たちの「〆切」をめぐる苦悶の様子や言い訳を集めたアンソロジーが人気です。

    〆切本
    著者:左右社
    発売日:2016年09月
    発行所:左右社
    価格:2,484円(税込)
    ISBNコード:9784865281538

    『〆切本』は、夏目漱石から西加奈子まで文豪・作家90人が「〆切」について綴った随筆や書簡が、94編も収録された一冊。2016年9月に初版3,400部で刊行されてから売れ続け、発売2か月あまりで6刷となり、現在は初版の約8倍にあたる2万8,000部にまでなっているそうです。

    今回はそんな『〆切本』について、自らも〆切と格闘しながら本を作り上げた左右社のお二人にお話を伺いました。

     

    今回取材にご協力いただいた方

    左右社のお二人

    (左から)営業部部長 兼 制作部 脇山妙子さん、左右社 編集部 細口瀬音さん

     

    文豪たちの見せる「B面」が面白い

    ―明快なコンセプトながら、これまで読んだことがなかった企画です。『〆切本』がどのように生まれたのか、教えていただけますか?

    細口:『〆切本』は、弊社の代表で編集長の小柳学が長年温めていた企画です。小柳は出版業界が長く、明日までと言われた原稿が次の日になり、明日の昼までと言われた原稿が夜になる、そんな〆切の不思議さに興味を持ち、本にまとめたいと考えていました。社内で話し合いを始めたのがおととしくらいで、何人かで一年くらいかけて資料を集め、形にしていきました。

    ―誕生までに2年くらいかかったということですね。

    細口:そうです。コンセプトを固めるまでにかなり時間をかけました。当初この企画は、現代の作家に原稿を依頼して、書き下ろしをまとめて作ろうとしていたんです。しかしある時、図書館で谷崎潤一郎の「遅延のお詫び文」を発見し、それがあまりにも切実で面白かったので「これはいける」と方向を切り替えました。

    〆切って、その前後で人間関係がぎゅっと密になるんですよね。作家と編集者の関係が急激に近づき、待たせている作家のほうが一瞬下になり、編集者のほうが上にくる。でも原稿が仕上がるとまた作家のほうが上にきて、「感想はまだか!」とか言うこともある(笑)。〆切を通すことで生まれる人間関係、感情の波、絆、喧嘩が何とも可笑しいんです。

    ―文豪の「ダメ人間ぶり」が見えるのが面白いですよね。オビに「なぜか勇気が湧いてくる」とありますが、ヒットしている理由もここにあるんでしょうか。

    細口:そう思います。作家にとって小説などの作品は、いわば「A面」ですよね。この本は人間の「B面」に目を向けたという切り口が面白かったのではないでしょうか。文豪たちですら言い訳をする(笑)。だからこそ読者は背中を押される感じがする、勇気が湧いてくるのだと思います。

    ―読者にはどんな方が多いですか?

    脇山:読者には、作家やものを書く仕事の方が多いようです。コミックマーケットなどの出展者からも反応があります。それ以外でも本当に幅広い読者から反響があって、作家ではなく会社勤めをされている方々も、日々〆切に追われているんだと分かりました。

    細口:みんな〆切は嫌いだと思うんです。でも〆切がないと作品は完成しないし、仕事は一生終わらない。〆切があるから人生が面白くなる。我々は、〆切に生かされているんじゃないかという気がしています。

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