• 明智光秀のきらめく青春!垣根涼介さんの歴史小説『光秀の定理』

    2016年12月22日
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    日販 ほんのひきだし編集部 「新刊展望」担当
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    〈垣根涼介さんの『光秀の定理』文庫版がこのほど発売されました。単行本刊行時(2013年8月)のインタビューを再掲載します。〉

    光秀の定理
    著者:垣根涼介
    発売日:2016年12月
    発行所:KADOKAWA
    価格:821円(税込)
    ISBNコード:9784041028100

    著者初の歴史小説。「もしプロとして10年間、モノを書き続けられていたら、歴史小説を書き始めてみようと思っていた」という。『ワイルド・ソウル』『ゆりかごで眠れ』『君たちに明日はない』……十数年のキャリアで現代小説のヒット作を数々生み出してきた。その間、一方で歴史小説を書く準備も重ねていたのである。

    「デビュー以降、史料は読み続けていました。日本史の流れを自分なりにつかむために。当時の世界観を知ろうと仏教書も読みました。その上で、ピックアップする人物を考えていった。結局、形になるまで10年以上かかりましたね」

    そうして描いた人物は、明智光秀。のちに「本能寺の変」を起こすに至る彼の青春の物語である。

    「光秀を選んだのは、モダンな人間だったから。史料の中にその足跡が残っています。人に対する優しさ、側室を置かなかったこと、小心者で他人の評価を非常に気にするところ……。あの時代、そんな人間はほかにいなかったのではないか。光秀は、現代にいても不思議ではないキャラクターなんです」

    主君の織田信長は、言わば「ブラック企業」。明智一族を一身に背負う光秀はそこで懸命に働き、織田家中で出頭していく。だが働けば働くほど、求められるものは大きくなる。それでも彼は生真面目に励むのである。

    「ただ、そんな苦労ばかりの話は書きたくない。主殺しという事実から暗い印象を持たれてしまう光秀の人生にも、楽しい時代はあった。それを明るいトーンで書こうと思いました」

    そこで登場するのが、光秀の2人の友─―坂東生まれの剣客浪人・新九郎と、路上博打を生業とする謎の坊主・愚息。『光秀の定理』は、彼ら3人の友情物語でもある。

    「真面目で有能な光秀も、友達の前では不器用で情けない男なんです。愚息から叱られ、新九郎からはヘタレと思われて(笑)。2人の友を通して光秀を立体的に照らし、暗いイメージを変えてみたいという思いもありました」

    若き日の3人の出会いはその後の歴史に大きく関わっていくこととなる。永禄11(1568)年、信長の六角氏攻め。光秀は長光寺城へと行軍する。山城に至る道は4つ。うち3つには伏兵が潜む。そのとき光秀の脳裏に閃いたのは、4つの椀を用いる愚息の賭博だった。本作のもう一つのテーマがこの「4つの椀」だ。確率論を絡めたミステリーが史実と融け合うエンターテインメントの妙。それがこの歴史小説のさらなる魅力である。

    「現代小説と歴史小説では、言葉づかいもテンポも違って苦労しました。書き方に対する意識も今までの作品とは少し違う。でも『やっぱり垣根の小説だ』と感じていただけると思います。自分自身は変わらず、ベースにあるものは同じだから」

    これからも歴史小説において「書きたい題材はたくさんある」と語る。

    「『光秀の定理』が受け入れられたら(笑)、『信長の原理』『家康の条理』の三段構えを考えています」


    垣根涼介さん垣根涼介 Ryosuke Kakine
    1966年長崎県生まれ。筑波大学卒。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞し、デビュー。2004年『ワイルド・ソウル』で大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞と、史上初のトリプル受賞に輝く。2005年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞を受賞。2016年『室町無頼』で、第6回 本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。その他著書に「ヒートアイランド」シリーズ、『ゆりかごで眠れ』『月は怒らない』『狛犬ジョンの軌跡』ほか多数。

    室町無頼
    著者:垣根涼介
    発売日:2016年08月
    発行所:新潮社
    価格:1,836円(税込)
    ISBNコード:9784104750061
    迷子の王様
    著者:垣根涼介
    発売日:2016年11月
    発行所:新潮社
    価格:594円(税込)
    ISBNコード:9784101329772
    狛犬ジョンの軌跡
    著者:垣根涼介
    発売日:2015年07月
    発行所:光文社
    価格:821円(税込)
    ISBNコード:9784334769314

    (「新刊展望」2013年10月号「著者とその本」より)common_banner_tenbo

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