• 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の山田真哉さん 「はじめてのえいぎょう」は書店だった

    2016年12月10日
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    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』で知られる山田真哉さんから、本屋さんにまつわるエッセイをお寄せいただきました。小さな子どもの「はじめてのおつかい」のごとく、自著の注文を取るために「はじめてのえいぎょう」に挑む、若き公認会計士のけなげな姿を想像してみてください……。%e5%b1%b1%e7%94%b0%e7%9c%9f%e5%93%89%e3%81%95%e3%82%93

    山田真哉
    やまだ・しんや。公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー。兵庫県出身。『女子大生会計士の事件簿』で作家デビュー。同シリーズは100万部、2005年に出版した『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は160万部突破のベストセラーに。『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』『結婚指輪は経費ですか? 東京芸能会計事務所』ほか著書多数。

     

    『はじめてのえいぎょう』は書店だった 山田真哉

    僕は2002年、26歳の時に『女子大生会計士の事件簿』という小説でデビューした。180万円という大金をはたいた、自費出版であった。それほど売れるとは思っていなかったのだが、いざ原稿が完成すると、「せっかく大金をはたくのだからたくさん売りたい」と思い始めた。

    そこで、版元の社長に思い切って相談してみた。版元は英治出版というできたばかりの出版社で、社員は2名だけだった。僕の問いに、「営業をして注文を取るしかないでしょ」と事もなげに社長は言った。「では営業をお願いします」と言うと、「いや、山田さんがやるんですよ」という返事が。僕が営業? 会計士として働いていた僕に、営業の経験など全くない。そもそも、営業が苦手(もっと言うと、人と接するのが嫌!)だから、社内業務系に進んでいるのである。営業なんて死んでも嫌だ。と言ったところで、版元には当時営業担当の社員はおらず、営業するとしたら自分しかいなかったのである。

    そのまま社長と一緒に、当時の本社があった渋谷から徒歩でいける書店を回ることになった。まず一番近い書店に行って(リブロだったと記憶する)、社長が注文を取るやり方を見せてくれた。

    バックヤードに行って会計本担当の書店員さんに話しかけ、本を紹介、注文書を渡して、そこに注文冊数を記入してもらって、番線印を押してもらう。

    1軒目を終えて書店を出ると、社長から「まあこんな感じでね、はい」と注文書を50枚ほど渡された。そのまま社長は次の仕事に出かけてしまったので、残された僕はひとりで次の書店に向かうしかなかった。

    大きな書店に入り、ビジネス書コーナーに向かう。辺りを見回して書店員さんを探すが、見つからない。仕方がないので、レジに行く。しかし、レジの人にいきなり話しかける勇気はないので、そこら辺の文庫を手に取って、買い物客としてレジに並んだ。そして、カバーがかけられた文庫を手渡される寸前で、思いきって声を掛けた。

    「あのう、僕、本を書いてまして」「は、はあ」「出版社の人間ではないんですが、注文が欲しくて」「あの、どういうことでしょうか?」「いや、えっと、会計本担当の方を呼んでいただけると……」

    怪訝な顔をしながらも、内線電話をかけてくれ、僕に「レジの横でお待ちください」と言ってくれた。

    その後、会計本担当の方に話をして、僕は初めて5冊の注文を取ることができたのである。

    書店を出ると辺りをキョロキョロと見まわした。『はじめてのおつかい』のごとく、こっそり社長がついてきて、僕が無事に営業できるかどうかを見守っているかと思ったのである。しかし、そんなことは全然なかった。ある意味、僕に任せてくれたのである。

    それからは休みの日や仕事の合間をぬって、できるだけ書店を回った。書店が多い新宿・池袋・神保町、働く人が多い大手町・浜松町、大手会計事務所のお膝元だった霞が関・田町・飯田橋、足を伸ばして横浜、出張先の名古屋など、営業に行った書店の数は50以上、注文も500冊ほど取ったと思う。

    そして、本が売れないと注文をくれた書店員さんに申し訳ないと思い、日経新聞に自費で半5段広告をうった。結果的に、それが『女子大生会計士の事件簿』のスマッシュヒットにつながったのである。

    ただこれには副作用もあった。僕がアポなしで書店に注文を取りに行った話を勝間和代さんが本で書き、勝間さんに憧れる新人のビジネス書著者たちがこれをマネし始めたのである。一時期、「アポなしで来る人が増えて困っています」という苦情を書店員さんから受けた。あの時は本当にご迷惑をおかけしてしまった。

    【著者の新刊】回転ずしは食費ではなく娯楽費である

    (山田真哉、黒澤R/白泉社/価格:907円(本体840円+税)/2016年11月発行)

    ママは忙しくてお金のことを考える時間がない。でも、少しの工夫で家計の節約ができる。そんな知識を「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の山田真哉がママ向けにまんが形式で解説。

    (日販MARCより)


    (「日販通信」2016年12月号「書店との出合い」より転載)

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