〈対談〉天野純希さん×木下昌輝さん 7人の作家がひとつの戦場を描く『決戦!』競作に参陣

2015年06月16日
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日販 商品情報センター 「新刊展望」編集部
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7人の作家が戦場を東西両陣営から描いて話題となった『決戦!関ヶ原』。第2弾『決戦!大坂城』刊行に合わせ、気鋭2人がシリーズの魅力とそれぞれの作品について語り合う。

天野純希  Sumiki Amano
1979年愛知県生まれ。愛知大学文学部史学科卒業。2007年「桃山ビート・トライブ」で第20回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2013年『破天の剣』で第19回中山義秀文学賞を受賞。他の著書に『風吹く谷の守人』『戊辰繚乱』『信長 暁の魔王』『覇道の槍』など。

木下昌輝さん02木下昌輝  Masaki Kinoshita
1974年奈良県生まれ。近畿大学理工学部建築学科卒業。2012年「宇喜多の捨て嫁」で第92回オール讀物新人賞を受賞。2014年、受賞短篇を含むデビュー作『宇喜多の捨て嫁』が第152回直木賞候補となる。2015年、同作で第2回高校生直木賞、第4回歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。

決戦!関ケ原
著者:伊東潤 吉川永青 天野純希 上田秀人 矢野隆 冲方丁 葉室麟
発売日:2014年11月
発行所:講談社
価格:1,728円(税込)
ISBNコード:9784062192514

決戦!大坂城
著者:葉室麟 木下昌輝 富樫倫太郎 乾緑郎 天野純希 冲方丁 伊東潤
発売日:2015年05月
発行所:講談社
価格:1,728円(税込)
ISBNコード:9784062195034

 

デビュー作のきっかけ

天野 木下さんの『宇喜多の捨て嫁』を読んで、これは絶対にデビュー作ではないだろうと思いました。ベテラン感がすごい。小説はどのくらい前から書いていらっしゃるんですか。

木下 5、6年前からでしょうか。高校くらいからずっと書きたいとは思っていて、それまでは関西で10年ほど、飲食店の取材を中心にライターをやっていました。

天野 では書くこと自体はずっとされていたんですね。

木下 高校の頃にバレーボール部で練習日記ならぬ交換日記をしていたら、みんながおもしろいとほめてくれて。実は僕、運動神経が悪くて補欠だったのですが、その日記で「文章がおもしろい木下」というポジションができたんです。単純なので、じゃあ小説家になろうかなと。天野さんは小説を書き始めるきっかけはあったんですか。

天野 父が歴史小説オタクで、家に歴史小説しかなかったんです。就活も嫌だし小説家にでもなろうかなと思ったときに、何を書くかといえば自然と歴史小説でした。

木下 天野さんのデビュー作『桃山ビート・トライブ』は、三味線弾きや舞姫といった若者4人が一座を結成し、音楽と踊りで権力に立ち向かうという物語ですが、あの発想はどこから来たのですか。

天野 まあ禁じ手ですよね(笑)。歴史小説を書こうと史学科に入ったものの、バンドサークルで音楽を始めて、好きなことが2つになってしまった。その2つをなんとかうまいことセットにできないかと歴史上で音楽が盛り上がっていた時代を調べていたら、桃山時代に行きついた。そこからあの話が生まれました。木下さんは、なぜ宇喜多直家を。

木下 僕は“竹の内流”という古武道をやっていたのですが、岡山県の美作が発祥で、すごくおもしろい。織田信長が生まれる前、1532年という下克上の時代に創始されたので、考え方が卑怯なんです。びっくりしたのは、「風呂詰」という奥義。自分より強いやつが道場破りに来たら、とりあえず謝って弟子にしてもらえと。で、お風呂に入ってもらって、素っ裸にしてからみんなで囲って殺す。

天野 せこいなあ(笑)。

木下 型も、隣にいる人が急に襲ってきたらどうするかといったものばかり。それだけ裏切りが多かったのでしょう。創始者の竹内久盛のことを書こうかと思ったのですが、久盛は戦国の謀将・宇喜多直家に滅ぼされています。調べているうちに直家がすごく面白い人物だとわかって、書くことにしました。

 

「立派でない人」を描く

―天野さんも、三好元長や島津家久など知られざる武将を主人公に作品を書かれていますが、そうしたキャラクターたちはどのように発掘されるのですか。

天野 本を読んでいると、どこかしら気になる人がいるんです。ひっかかるポイントは人それぞれですが、ものすごくダメだったり、人間ができていなかったり。立派ではない人に惹かれます。

木下 『決戦!関ヶ原』の織田有楽斎も、武人としては最低ですよね(笑)。ダメな人間をうまいこと書かはるから、可愛げがある。

―天野さんは『関ヶ原』では織田信長の弟で「茶の湯の道」にしか興味のない有楽斎を、『大坂城』では暴君のイメージがある、家康の孫・松平忠直を描いています。

天野 忠直の悪行のひとつとして語られる「妊婦の腹を裂いた」という話は暴君のテンプレみたいなものなので、忠直もそんなに悪いやつじゃないだろうなと書き始めて。書いていくうちにキャラが定まっていった感じです。木下さんは『決戦!大坂城』で真田信繁(幸村)を書かれていて、彼のキャラがすごくおもしろかった。最初からああいう人間として書こうと決めていたのですか。

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