西畠清順

プラントハンター・西畠清順さんに聞く“はつみみ”な植物の話

2016年11月15日
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日販 ほんのひきだし編集部 「新刊展望」担当
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珍しい植物を求めて世界中を飛び回るプラントハンター・西畠清順さん。2012年、ひとの心に植物を植える活動“そら植物園”をスタートさせ、さまざまな植物を使ったプロジェクトで注目を集めています。

本稿は西畠さんの最新刊『はつみみ植物園』(東京書籍)の刊行を記念し、2016年10月2日、幕張 蔦屋書店で行われたトークイベントを採録・再構成したものです。

 

西畠清順さんについて

西畠清順さん

PROFILE
にしはた・せいじゅん。1980年生まれ。幕末より150年続く花と植木の卸問屋の5代目。日本全国・世界数十か国を旅し、収集している植物は数千種類。日々集める植物素材で、国内はもとより海外からの依頼も含め年間2000件もの案件に応えている。2012年、ひとの心に植物を植える活動「そら植物園」(http://from-sora.com/)をスタートさせ、植物を用いたいろいろなプロジェクトを多数の企業・団体などと各地で展開、反響を呼んでいる。

はつみみ植物園
著者:西畠清順
発売日:2016年07月
発行所:東京書籍
価格:1,512円(税込)
ISBNコード:9784487808823

 

プラントハンターという仕事

西畠:みなさんはプラントハンターという職業にどんなイメージを持っておられるでしょうか。元々は300年くらい前のヨーロッパを中心に、王族や貴族に雇われて、遠い国から珍しい植物を採ってきて届けた人をいうそうです。

いまでもそうですが、当時、富のある人たちがどんな豊かさを求めたかというと、いい家に住みたいと思ったら、優れた建築家に家を建てさせる。毎日美味しいものを食べたければ、腕のいい料理人に作らせる。素晴らしい音楽を聞いて過ごしたいと思えば、音楽家に奏でさせる。生活を豊かにするために、昔の王侯貴族はそうやっていろいろな人を雇いました。

彼らが一番最後に欲しくなるのが植物。誰も見たことのない美しい花や、採れたての実が食べられる果実のなる木だったわけです。そのためには、それを採ってくる人が必要。そういうふうに王族や貴族、現代では企業に雇われて植物を探す人たちのことを、プラントハンターといいます。

いま現在、僕自身も、とある国の王族に頼まれて植物を探したり、届けたりしています。それだけではなくて、イベントをやりたいとか、結婚式やお葬式に花が必要だとか、公園を造るから木を植えてほしいなどいろんな依頼があります。企業や団体、政府、行政機関から個人まで、植物を使って何かやりたいという人たちと、さまざまなプロジェクトを行っています。

日本で植物というと、ほとんどが流通に乗ったもので語られています。つまり、どこかの産地に頼めば手に入る植物。店やホテル、病院などにたくさん飾られている観葉植物もそうです。僕が得意としているのは、流通に乗っていない植物です。産地に電話したり、ファックスを問屋さんに流せば手に入るわけではありません。必要な植物があるのは危険な崖の上かもしれないし、何トンもあるような巨大な木かもしれない。日々そういったことをやっています。

植物を求めて海外を旅していると、いろんな人や、植物が織りなす美しい景色に出会います。生きている植物だけでなく、すでに枯れてしまった植物でもおもしろいものを常に探しています。だいたい年間260トンくらいの植物を自社で輸入して国内向けに販売しています。

僕の会社では常時3,000種類くらいの植物を管理しています。輸出もしていますが、日本の植物って実は海外でものすごく高い評価を受けているんです。いま日本では、門かぶりのクロマツを玄関に植える人は少ないですが、海外だとこんなに安い木はないと10倍くらいの値段になる。そういうふうに価値観が変わるところに植物を届けると、利益も生じるし、いろんなチャンスがある。それもプラントハンターの仕事です。

先ほどもいいましたが、日本では庭付きの家に住んで、大きな木を植える家庭が少なくなっています。その分、庭とか植木との心の距離が遠くなってしまう。みなさん、いつも自分が乗り降りする駅に何の木が植わっていたか、もしくは毎朝家から出て、最初に見かける植物、庭木、街路樹、なんでもいいので思い浮かべてください。意外にみんな何の木だったかなとなる。イオンモールの何階のあそこにおいしいパン屋さんがあったということは覚えているのに、いつも見ているはずの木が思い出せないことが多いんです。

(植物の魅力を広く伝えるための活動“そら植物園”では)そういう身の回りにさりげなくある植物にいかに気付いてもらうか、そら植物園風にいうとモノゴコロついてもらうかをテーマに、日々活動しています。

 

植物の意外な常識が一冊に

西畠:庭を作ったり、室内でイベントをしたり、山に生け花用の花を切りにいってアーティストの作品作りをお手伝いしたり、今日みたいにトークイベントをやったり。いろんな手段で植物を世間にプレゼンテーションし続けているうちに、いままで何冊かの本を出させていただきました。

2年前に出た『そらみみ植物園』という本が植物界のベストセラーになり、「俺の本売れるんやな」と味を占めて、東京書籍さんにも「もう1冊やりましょう」と言われてつい最近出したのが『はつみみ植物園』です。しかし、味を占めて出した割には……(笑)、ということで、こういうイベントを開かせていただいています。今日はせっかくの『はつみみ植物園』出版記念ということで、この本を作るのに尽力いただいた編集者に来てもらっています。東京書籍の植草武士さんです。

植草:『はつみみ植物園』という本を清順さん、頑張って書いてくださいました。一昨日スペインから戻られたそうですが、清順さんは年間の半分くらいが海外、3分の2以上がホテル暮らしということで、まったく捕まらないんです。清順さんは正直だから、それでも「自分で調べて納得のいくものを書き上げたい。いまやるから待っててくれ」と。僕はそれを聞く度に、この人は本当にいい人だ、絶対に嘘をつかないし、約束を守らないけれど(笑)、でも絶対に作ってくれるという確信を与えてくれる人だったので、待ちに待って一生懸命作り上げました。

イラストも多摩美術大学の学生さんに頑張って描いていただいて、いい本になったと思います。

はつみみ植物園イベント

西畠:この本には、なぜお正月に門松を飾るのか、なぜ母の日に赤いカーネーションをプレゼントするのか、森と林の違いは何かといった、知っていそうで知らない、植物の意外な常識が一冊につまっています。

今日は、本の内容紹介を兼ねて、植草さんが夜鍋をしてクイズを作ってきてくれました。題して『はつみみ植物園』発売記念イベントクイズです。

植草:さっそく第1問です。植物はいつ地上にやってきたでしょうか?

①4億5千万年前
②3億5千万年前
③2億5千万年前

植草:ほとんど距離感がわからないかと思うのですが……。

西畠:植物の祖先は海で生まれました。地球が生まれたのは約46億年前。地上にはしばらく生物がいなかった。でも大陸が動いてぶつかると、山ができます。これがきっかけです。

山ができると高低差が生まれるので、雨が降ったら川になります。その川が大地からいっぱいミネラルを吸収して、海に流れ込む。それが生物の発達した原因です。で、海の中に生物が増えると、何が起こるか。そう、争いが起きます。そうすると弱い者は強い者から逃げます。どこに逃げたかというと、川を遡ったんです。途方もなく長い時間をかけて、塩水から淡水に慣れながら。しかし、みんなが川に逃げるとそこでも争いが起きます。そこで、植物の祖先は重力に耐えて、川から逃れたんです。

それが①の4億5千万年前。最初はシダ植物が地上に姿を現して巨大化していきます。その植物はモクセイシダだと言われていて、僕はこの近くの某テーマパークにもたくさん納品しています。みなさんも行くことがあったら見てみてください。

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