• 思い込みの話 文・「週刊女性」編集長 寺田文一

    2016年10月05日
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    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    昨年、高校卒業から30年ということで少し規模の大きい同窓会があった。初めて参加したのだが、同年代の友人との話題はもっぱら体調や薬の話だ。そういう年齢になったんだな、と思う。年を重ねると、身体にもいろんな影響が出る。若いころは想像できなかったことも多い。20代のころは食事をした後に爪楊枝を使うことなどなかったし、髪の毛は抜ければ必ず生えてくるものだと思っていた。

    「思い込みが激しくなって……」と嘆く友人もいるが、こればかりは加齢のせいとはいえないかもしれない。

    今でも毎年2月と8月になると夢にまで出てくる苦い思い出がある。

    約30年前に都内にある私立大学を受験した。私はその大学の付属高校に合格していたのだが、都立高校に進学していた。

    《付属高校に受かっているし、楽勝だな》と考えて試験に臨んだ。手ごたえもバッチリだった。

    忘れもしない2月下旬の合格発表。キャンパスに足を運ぶ。すると……

    私の受験番号がない!

    掲示板の前に群がる人々を遠巻きにし、「警備」と書かれた腕章を巻いたオジサンに声をかけた。

    「あのー、僕の番号がないんですが……」

    すると顔いっぱいに「?」マークを出しながらこの学生はいったい何をいっているのだろうか?という表情で私を見つめるオジサン。私は再度、尋ねた。

    「僕の前と後ろの番号はあるのに僕のがないんです!」と少し強めにいった。

    警備のオジサンは、これ以上ないという困惑の表情でしばらく考えてこう答えてくれました。

    「あのー、今日はね、合格した人の番号しか出してないんですよ」

    その言葉が終わる寸前、やっと私は気づいた。

    《不合格だったのか!》

    そのあとのことはあまり覚えていない。というか思い出したくない。とにかく頭を下げてその場から小走りに帰った。真っ赤な顔、多分耳まで真っ赤だったと思う、冬なのに……。

    オジサンは優しかった。バカにするでもなく、諭すようにいってくれた。中でも泣かせるのは「今日はね」以下のセリフ。どこに不合格者の受験番号を掲出する大学があろうか?(それじゃ、「合格」発表ではないし)。彼は精いっぱい、傷つけないように説明してくれたのだと思う。

    ただ、その日の夜には、大学近くの居酒屋で「今日、すんごい学生が来たよ」とネタにしたに違いない。

    そんな恥ずかしい体験からたった4年後、今度は就職活動でも……。

    とある出版社の最終面接まで進んだ。役員のみなさんを前にやっぱり手ごたえはバッチリ。

    しかし一向に内定のお知らせが届かない。8月の暑いある日、痺れを切らして、電話をかける。

    「私、御社を受験しました○○大学の寺田と申しますが、内定の通知というのは……」

    私の問いかけを遮るように、電話口の女性は、「内定した方々は本日、健康診断をしていますよ」

    「ハイハイ、そうですか。それで内定のお知らせは、いつ……」

    今度はここで気づきました。

    そして、4年前のオジサンの顔を思い出しながら、「失礼しました」と受話器をそっと置く。

    先にも書いたように「思い込みが激しくなる」のは、こと私に関しては加齢の影響ではない、と断言できる。

    幸い、社会人になってからこの種の失敗はない(ように思う)。今は、この傾向が強くならないことを祈る日々である。


    主婦と生活社「週刊女性」編集長
    寺田文一―TERADA Bunichi
    1967年東京生まれ。1991年に主婦と生活社入社。販売本部に配属。1994年「週刊女性」編集部に異動。2014年11月から現職。


    「週刊女性」
    日本初の女性週刊誌。2017年に創刊60年を迎える。芸能や社会・皇室ニュースと実用情報を発信。最近は反原発など硬派な記事も目立つ。10月4日号(9月20日発売)では、羽生結弦選手の最新情報と高畑母子の今後、秋のお取り寄せほかを掲載。

    週刊女性 2016年 10/18号
    著者:
    発売日:2016年10月04日
    発行所:主婦と生活社
    価格:410円(税込)
    JANコード:4910203631061

    (「日販通信」2016年10月号「編集長雑記」より転載)

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