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新選組大好き作家・小松エメルさんが「新選組を探して」足繁く通った本屋さんの思い出

2016年10月06日
楽しむ
日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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夢の燈影 新選組無名録』で新選組好きの心をぐいっと掴んだ気鋭の時代作家・小松エメルさん。沖田総司を描いた長編『総司の夢』も絶賛発売中です! 中学生の頃から新選組好きだったという小松エメルさんの「書店の思い出」は、やっぱり新選組にまつわること……。新選組と書店への想いを、エッセイに綴っていただきました。

%e3%81%93_%e5%b0%8f%e6%9d%be%e3%82%a8%e3%83%a1%e3%83%ab小松エメル
こまつ・えめる。1984年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。母方にトルコ人の祖父を持ち、名はトルコ語で「強い、優しい、美しい」などの意。2008年、ジャイブ小説大賞を受賞しデビュー。著書に「一鬼夜行」「蘭学塾幻幽堂青春記」「うわん」の各シリーズ、『夢の燈影 新選組無名録』がある。最新刊『総司の夢』は、新選組一番隊隊長・沖田総司の一代記。初の単行本書き下ろし長編となる。

 

新選組を探して 小松エメル

高校時代、定期券圏内だった新宿で、私はよく途中下車をした。目的地は二か所―ー紀伊國屋書店新宿本店と同書店の新宿南店だ。この両書店にはとてもお世話になった。

中学生の頃から新選組が好きだった私は、高校に入って出会った「私も新選組が好きだよ」と声をかけてくれた友だちー―私のように妄執を抱いていたわけではなく、私と仲良くなるために軽い気持ちで言ったのだろう―ーとほぼ毎日一緒に下校していたので、彼女に付き合ってもらって、新選組関連の本を探しにいったのである。ちなみに彼女には、多摩や調布や京都、修学旅行先の函館でも新選組の史跡巡りに付き合ってもらった。今思うと有り難いやら、申し訳ないやら……おかげさまで、とても楽しかった覚えがある。

新選組というと、現在は膨大な数の関連書籍が出ているが、当時は大河ドラマ「新選組!」の放映前ということもあり、それほど盛り上がっていなかった。絶版本も多く、小説の新刊本には主役としてというよりも、サブキャラ的な位置で出ることも数知れず。資料本も出るには出ていたけれど、研究はさほど進んでいる印象は受けなかった。もっと深く知りたい、色々な新選組を読みたい―ーそんな欲求が募った結果、行き着いた先が新宿の紀伊國屋書店だった。

両書店共に、私がはじめて足を踏み入れたのは、歴史書が置いてあるフロアだった。日本史のコーナーを探すためにあちこちウロウロして、やっと見つけてからは、古代から近世、幕末まで順に辿っていき、ついに新選組の関連書籍が並んでいる棚を発見した。その時は、心の中でわーと歓声を上げたものだ。

中学生の頃は、図書館で借りて読むか、古書店を巡って昔出版された書籍を手に入れることが多かったし、地元の書店は歴史関連の書籍があまり揃っていなかったので、発売ほやほやの新選組本が何冊も置いてあるという事実に、非常に胸が高鳴った。その傍らで、友だちは何とも言えない生温かな眼差しで私を見ていた。しかし、熱に浮かされた私は、そんなものを気にする余裕などなかった。彼女とは気の置けない仲なので、今一緒に書店に行ったとしても、私はあの頃と同じことをしてしまう気がする。恐ろしいことに、人間の本質というものは、時を重ねても変わらないものらしい。

足繁く通ったのは歴史フロアだけでなく、文芸書フロアもだった。単行本は滅多に買えなかったけれど、文庫本は新選組が少しでも関係しているものだったら、大体購入した。これは、新選組隊士である必要があるのだろうか? というような謎の端役として登場しても喜んで読んでいたのだから、当時の私は幸せだった。色々な意味で、十五、六年前の私が羨ましい。

そういえば、私が作家になろうと思い立ったのは、高校三年生の時だった。当時は漠然と思っただけだったので、まさかそれから十年もしないうちに、学生時代に足繁く通い、今でもよく訪れる書店に、作家としてサイン本や色紙を書きに行くようになるとは夢にも思わなかった。おまけに、それが新選組作品であるとは……。好きなものを突き詰めた結果とはいえ、不思議なものである。

残念なことに、新宿南店は洋書専門の書店になってしまったが、私はこれからも学生時代の楽しい思い出が詰まった場所として、あの書店を忘れることはないだろう。新宿本店には末永くあの場所に存在しつづけて欲しいものだ。そこに私の著作を並べつづけてもらえるように、いい作品を書いていかねばと改めて決意した次第である。

久しぶりに、一緒に新選組の本を探しに行こう―ーそう誘ったら、あの友だちはどんな顔をするのかなと考え、思わず笑ってしまった。近いうちにぜひ実現したいものである。

【著者の新刊】

総司の夢
著者:小松エメル
発売日:2016年09月
発行所:講談社
価格:1,728円(税込)
ISBNコード:9784062196031

新選組一番隊組長・沖田総司。江戸の一道場の塾頭だった若者は、時代の急流の中で、幕末随一の剣士となっていく。何故、俺は人を斬るのか。自らに問いながら、沖田は最強の男、「鬼」の正体を探そうとする。

(日販MARCより)


(「日販通信」2016年10月号「書店との出合い」より転載)

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