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北の大地を舞台に「自分のためにしか生きられない」人間の姿を描く 桜木紫乃さん『星々たち』インタビュー

2016年10月05日
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日販 ほんのひきだし編集部 「新刊展望」担当
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〈桜木紫乃さんの『星々たち』文庫版がこのほど発売されました。単行本刊行時(2014年6月)のインタビューを再掲載します。〉

星々たち
著者:桜木紫乃
発売日:2016年10月
発行所:実業之日本社
価格:640円(税込)
ISBNコード:9784408553139

「一編一編を短編として成立させながらも、すべてを読み終わったときに、もうひとつの大きな物語が現れる」。北の大地に生きる人々の哀歓と、〈塚本千春〉という1人の女の半生を描く本作は、そんな試みに満ちた9編からなる連作短編集。千春を実母に預けたまま、恋と夜の世界に生きる母・咲子。高校生の千春と内職を共にする隣家の主婦や、スーパーの配達員である千春に思いを寄せる裁判所職員。息子と千春の娘・やや子を育てることになる理容師の妻……といった、それぞれの目に映る千春の〈いま〉が、彼女の生きた軌跡をあぶり出していく。

母も千春もその娘も、互いの消息さえ知らず、その人生はほぼ交わることがない。著者は、一生親兄弟に会わない覚悟で北海道に渡ってきた開拓者の「3代目」であり、生まれ育った釧路は「流れ者の町」。

「千春の娘は母の名前も知らないけれど、それでも血はつながっていく。そのつながりに過剰な期待はいらないのではないかと思っています。会えなくても、思い合っていれば、どこかで生きていてくれればそれでいいのでは」

「終わってみると、自分のためにしか生きられない人たちのお話だなと」。これまでも「人からいろいろと言われがちな人たち」ばかりを登場させてきたが、書きたいのは「自分のことしか考えていないように見えても、一枚剥いでめくるとどうなのか」。

「思いと行動がかみ合わないのはよくあることで、それを否定しても仕方がない。人を、良い人、悪い人と分けられるならこんなに楽なことはないけれど、それは自分の都合ですよね。小説を書く作業は、自分の都合では動かない人たちと付き合って、彼らの生き方を肯定していくことでもあると思っています」

北海道の、土地ごとに色合いを変える風景の中で、千春と、彼女にかかわる人々がいかに生きたのか。著者は「ただの筆」となって、その生と性の有り様を写し出す。

「人と人って、そばにいたらそんなに深く知り合う必要はないんじゃないかといつも思うんです。知らないからこそ一緒にいられる関係もある。わかった気になってしまうのが一番怖いこと」。

誰かの人生に光を灯すこともあれば、狂わせてしまうこともある。桜木作品に登場する人物たちは、「こんなふうにしか生きられない自分」と「人と人との間にある不確かさ」を引き受けて、自らの生を貫いていく。

9つの物語の先に、くっきりと立ち現れる塚本千春という女。そのミステリアスな存在に引き寄せられて、何度でもページをめくりたくなる。読み返す度に、生きる哀しみを濃やかに切り取る一節が、小説の醍醐味を味わわせてくれるだろう。


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桜木紫乃 Shino Sakuragi
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。2007年、同作を収める『氷平線』で単行本デビューし注目を集める。12年『ラブレス』で「突然愛を伝えたくなる本」大賞、13年に第19回島清恋愛文学賞を受賞。さらに同年『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞。

ホテルローヤル
著者:桜木紫乃
発売日:2015年06月
発行所:集英社
価格:540円(税込)
ISBNコード:9784087453256
裸の華
著者:桜木紫乃
発売日:2016年06月
発行所:集英社
価格:1,620円(税込)
ISBNコード:9784087716658
著者:桜木紫乃
発売日:2015年09月
発行所:小学館
価格:1,620円(税込)
ISBNコード:9784093864206

(「新刊展望」2014年8月号より)

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