陸王 池井戸潤

池井戸潤が語る『陸王』創作秘話とエンタメへの思い〈インタビュー〉

2016年08月20日
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日販 ほんのひきだし編集部 「新刊展望」担当
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創業100年の老舗足袋製造会社が、“走るための足袋”を開発し、ランニングシューズ業界に参入する―。池井戸潤さんの新刊『陸王』は、地方の一零細企業が熱い思いと信念で、仲間たちとともに新たな物づくりにチャレンジしていく長編エンターテインメント。足袋とランニングシューズは、同じ履物でも用途はかなり違うもの。この2つを結びつけるアイデアはどこから生まれたのだろうか。

陸王
著者:池井戸潤
発売日:2016年07月
発行所:集英社
価格:1,836円(税込)
ISBNコード:9784087716191

「版元の集英社の人とゴルフをしていた時に、ひょんなことから出てきたアイデアなんです。メンバーにランニングを好きな人がいて、ビブラム社のファイブフィンガーズという五本指のシューズが裸足感覚で地面にペタッと付く感じがいいと話をしていて。足袋と同じですねというところから、足袋屋さんがランニングシューズを作る話ができるのではないかと思いました」

縮小する一方の足袋需要に危機感を抱くこはぜ屋の社長・宮沢は、シューズ売場で5本指の奇妙な形のシューズを目にする。その着想にヒントを得て、これまで培ってきた技術を生かした新製品の開発を思いつくが、世界的メーカーとの争いや資金難、難航する素材探しと次々に難題が降りかかる。

走法に悩む実業団ランナー、シューフィッター、倒産経験を持つ元会社社長など、さまざまな人間たちの悩みや矜持がぶつかり合い、生まれた絆がブレイクスルーを起こしていく。

「小説というのは基本的に人の集まりなので、キャラクターがすべて」。会話の中にその人物のメンタリティをにじませて、人物を読み解くことで自然とストーリーが出来上がっていく。そこに無理や矛盾がないからこそ、読み手は彼らの行動や成長に共感したり、納得したり、より深く物語を体感することができる。それが池井戸作品のおもしろさの「肝」だ。

執筆にあたり実業団の監督や足袋業者にも話を聞いたが、「取材はあくまでも雰囲気を見るため」。

ストーリー上「ここでこういう技術が欲しいな」と思えば、意外な素材で“特許技術”を考え出すことも仕事のうちだ。

製品開発はもちろん、小説にとっても「新しさやオリジナリティはもっとも大事なことで、その本の存在意義そのもの」。ベストセラーを連発しながらも、「いままでにない、これはすごいというエンターテインメントが、自分が書ける範囲でもっとあると思う。それをいつも探している」。池井戸さんのサイン会には、小学生から80歳過ぎまでの老若男女が集まる。それはその道のプロも満足できる情報を盛り込みながら、わかりやすく、おもしろく、最後まで読んでもらうための工夫が施されているから。そしてひた走るマラソンランナーの雄姿が人々の胸を熱くするように、自らの人生に、仕事にまっすぐ向き合う登場人物たちの姿が明日への勇気を与えてくれるから。そこには、創作にあくなき挑戦を続ける作家自身の生き方も映し出されているはずだ。


池井戸潤 Jun Ikeido
1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒業。1998年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞、2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞、2011年『下町ロケット』で第145回直木賞を受賞。他の作品に、半沢直樹シリーズ『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』、花咲舞シリーズ『不祥事』、『空飛ぶタイヤ』、『ルーズヴェルト・ゲーム』、『民王』、『七つの会議』などがある。

ルーズヴェルト・ゲーム
著者:池井戸潤
発売日:2014年03月
発行所:講談社
価格:864円(税込)
ISBNコード:9784062777957
民王
著者:池井戸潤
発売日:2013年06月
発行所:文藝春秋
価格:713円(税込)
ISBNコード:9784167728069
七つの会議
著者:池井戸潤
発売日:2016年02月
発行所:集英社
価格:864円(税込)
ISBNコード:9784087454123

(「新刊展望」2016年9月号「著者とその本」より転載)

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