佐渡島庸平×山内康裕に聞く『学べるマンガ100冊』!プロが選んだ「楽しみながら学べる」マンガとは!?

2016年07月05日
楽しむ
日販 ほんのひきだし編集部 「新刊展望」担当
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2015年度からスタートした「これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~」。選出された100冊はどれも、新しい世界を発見できる、学びにつながる作品ばかり。楽しみながら学べる「マンガ」の魅力を、同プロジェクトの選書委員である二人のプロフェッショナルがご案内します。

学べるマンガ100冊_山内さんprof

山内康裕 マンガナイト代表/レインボーバード合同会社代表社員
法政大学イノベーションマネジメント研究科修了。2009年、マンガを介したコミュニケーションを生み出すユニット「マンガナイト」を結成し代表を務める。また2010年にはマンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」を設立し、マンガに関連した施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務等を提供している。主な実績は「立川まんがぱーく」「東京ワンピースタワー」「池袋シネマチ祭」など。

学べるマンガ100冊_佐渡島さんprof

佐渡島庸平 株式会社コルク代表取締役社長
2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを設立。現在、漫画作品では『オチビサン』(安野モヨコ)、『テンプリズム』(曽田正人)、小説作品では『マチネの終わりに』(平野啓一郎)の編集に携わっている。

 

「マンガ」と「学び」を切り口に

―この度刊行された『学べるマンガ100冊』は「これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~」で選ばれた100冊が紹介されている一冊ですね。まずはプロジェクトが始まったきっかけから教えてください。

学べるマンガ100冊
著者:菊池健(漫画家支援) 佐渡島庸平 里中満智子 中村伊知哉 藤本由香里 細田尚子 本山勝寛 山内康裕 ヤマダトモコ
発売日:2016年06月
発行所:文藝春秋
価格:1,404円(税込)
ISBNコード:9784163904764

学校よりも塾よりも教科書よりも楽しい、最強の学び本!
灘高東大卒の最注目マンガ編集者、マンガ家の里中満智子さんほか「マンガ」と「学び」の達人たちによるセレクト&解説つき。
「あさきゆめみし」から「キングダム」まで。知恵と知識が身につくマンガを厳選、100作品を徹底紹介。

文藝春秋BOOKS『人生と勉強に効く 学べるマンガ100冊』より)

山内:主催である日本財団から、「マンガ」と「学び」という切り口で、社会をより良いものにしていく提案ができないかとお話があったんです。僕たちが子どもの頃、学校の図書館には『はだしのゲン』やいわゆる学習漫画はあったけれど、エンタメマンガはなかった。もし置いてあったらいろいろと違ったかもしれないなという思いがありました。図書館にも置けるような切り口でマンガを選ぶことによって、子どもたちや若者など今あまりマンガを読まない世代にも、一緒に楽しんでもらえるのではないかと思ったことがきっかけです。

佐渡島:僕はマンガも小説も何一つ差がなく編集していて、受け取る側にもそうあってほしいと思っています。でも現実にはまだマンガは大したことを語っていなくて、小説のほうが優れていると思っている人たちがいる。そういう偏見を打ち崩すにはぴったりの企画だと思いました。おもしろいなと思ったのは、僕に声がかかるんだということ。僕のマンガに対するスタンスや考え方は講談社にいた時と何一つ変わっていないのですが、いまはエージェント会社を立ち上げ全出版社と付き合っているので、公平な立場と思われたのでしょう。そう考えると、大手出版社の編集者とマンガ家以外に、マンガ業界で暮らす人がほとんどいない状態だったんだなと。山内さんはその一人ですが、マンガ業界と利害関係はあっても自由な立場という人が極端に少ない。そのこと自体もいまの業界の閉塞感とセットなのかなと思いました。

―山内さんはコンテンツプロデュースをはじめとしたマンガに関わるお仕事をされていますね。

山内:僕はもともと税理士で、マンガの読書会から活動をスタートしています。そのうち「こんな企画をやりませんか」という依頼が来るようになって、いまはマンガ周辺の仕事を本業にしています。マンガ雑誌の発行部数は1997年を境に落ち始めたのですが、(マンガの)単行本はそうでもなかった。それがここ5、6年で電子書籍が定着してきて、業界に変化の時代が来た。そういうタイミングで、「業界の外から視点の違う意見をいう人」としてハマったのかなと思っています。

―佐渡島さんのように、マンガも小説も手掛けるという編集者も珍しいのではないですか。

佐渡島:「モーニング」の編集部にいた時に、小説をやらせてくれないと異動すると言ったら「モーニング」の中に小説のページができたり、他部署に勝手に企画書を持ち込んで新書を作ったり。ずっとそういう感じで本を作ってきました。

学べるマンガ100冊_佐渡島さん

―編集作業においても違いはないのですか。

佐渡島:そうですね。文字だけにしろ、絵と文字を合わせたものにしろ、それによって喚起される知らない情報や別の世界観を読者が楽しむという意味では同じだと思います。

―読者としては、つい分けて考えがちです。

佐渡島:僕は学生時代、本、映画、コンサートやCDといった音楽、この3つは全部同じ財布でした。月いくらと決めたらその中でやりくりしていたので、別々という意識はなかったですね。

―どちらもおもしろいはずなのに、「本読み」「マンガ読み」と区分があるような気がします。すべてをキャッチアップできないということもあると思いますが。

佐渡島:そちらの問題のほうが大きいと思います。映画は予告を見ると行きたくなるので、映画を見に行っている人の方が足を運びやすい。それと同じで本を読んでいると、その本からまた次の本へとつながっていく。たまたま流通の仕組みで棚が分かれているけれど、オルタナティブな音楽を好きな人が好む小説やマンガはあって、同じ棚に置くとおそらく同じように売れる。お客の思考ではなくて管理側の問題で棚が決まると僕は感じているので、それを取っ払うべきではないでしょうか。

山内:最近は、そういうキュレーションができている書店も増えていますよね。僕はリテラシー(読み書き能力)の問題もあると思うんです。子どもの頃、家ではマンガを禁止されていても、書店で立ち読みをしていた人はマンガが読める。僕も小説は読めますが、詩を読んでもイメージが広がらない。おそらく詩を文字からイメージするのが得意ではないんです。それはこれまで詩を読んでこなかったリテラシー不足の問題があると思っています。いまの子どもたちはマンガをさほど読んでいないので、読めない子が増えてきています。

―コマをどう追えばいいかわからないんですね。

山内:なのでこういった企画をきっかけにマンガを読む人が増えて、マンガという「共通言語」が長く続けばいいですね。

学べるマンガ100冊_山内さん

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