• ジョークでつけた「珠玉」が真実に!山田詠美『珠玉の短編』作品ガイド

    2016年06月20日
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    日販 ほんのひきだし編集部 「新刊展望」担当
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    〈第42回川端康成文学賞受賞作「生鮮てるてる坊主」収録の『珠玉の短編』。名手が贈る最新作品集について、担当編集者の方に作品ガイドを寄せていただきました。〉

    珠玉の短編
    著者:山田詠美
    発売日:2016年06月
    発行所:講談社
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784062201247

     

    ジョークが真実に! 川端賞受賞の作品集

    スプラッタ描写に定評のある作家・夏耳漱子は、小説雑誌の目次で編集者から自作に“珠玉”というありがちな惹句を付けられたことに憤慨しますが、拒絶しようとすればするほど頭の中が“珠玉”に取り憑かれてしまい……!?

    本書の表題作「珠玉の短編」はこんなユニークな小説です。私自身、以前は文芸誌の編集部にいたのですが、某ベテラン作家の巧みな短編に、思わず「珠玉」という謳い文句を付けたことを思い出し、深く反省させられた次第。今回、11本の短編を集めた作品集のタイトルを『珠玉の短編』になさった詠美さんのユーモアに、子供の頃から詠美さんの愛読者だった私は、思わずにやりとさせられました。

    そんな中、本書に収録されている「生鮮てるてる坊主」が、第42回川端康成文学賞を受賞したという嬉しいニュースが飛び込んできました。川端賞は昨年一年間に発表された短編小説の中で、最も完成度の高い作品に贈られる賞です。文字通り“珠玉”の短編集になったわけで、ジョークが真実になってしまうあたり、さすが詠美さん! と思ったのでした。

    山田詠美といえば大人の恋愛や性愛、もしくは少年少女の無垢を描く作家、というイメージが強いかもしれませんが、本書のあとがきで詠美さんはご自身のことを「実は言葉用の重箱の隅をつつく病の重症者なのです」とお書きになっています。気になる言葉があると、どんどん妄想が膨らんでしまう病のおかげで生まれた小説ばかりが、この本には収められています。でも、決して言葉だけに囚われるのではなく、恋愛、友情、自尊心などにまつわる欲望が膨れあがっていった先に現れる人間の姿を鮮やかに描いていて、恐ろしいのに目が背けられない魅力のある作品ばかり。11編の“珠玉”の絶品をぜひご堪能下さい。

    文・講談社 文芸第一出版部 須田美音


    (「新刊展望」2016年7月号「エディターの注目本ガイド」より転載)common_banner_tenbo

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