• 『百年法』の山田宗樹さん最新作『代体』 「意識の転送」が実用化された近未来が舞台のSFエンタメ

    2016年06月17日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当 
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    「意識の転送」という技術が実用化された近未来の日本。重い病気やケガで入院を余儀なくされた人々の意識を、〈代体〉と呼ばれる人造人体の脳デバイスに移すことで、患者は治療の苦痛から解放され、社会生活を続けることができる。そんな医療ビジネスが普及し始めていた。

    ある日、代体メーカーの営業マン・八田の担当した患者がトラブルに見舞われ、代体に意識を宿したまま失踪してしまう。その後、変わり果てた姿で発見された代体は、“抜け殻”となっていた。

    行政機関や医療提供者、研究者、壊滅されたはずの犯罪組織、命に固執する患者たち。それぞれの思惑が絡んだ先に浮かび上がる、壮大な企みとは─。

    山田宗樹さんの最新長編作『代体』。「意識を転送する」というアイデアは、夢で見た「重い病気になった自分と雇った第三者の意識を入れ替え、苦しい治療を代わりに受けてもらう」というエピソードから生まれた。一度は短編として小説誌に掲載されたが、「もっと深い物語が展開できそうだという手応え」を感じて、ゼロから書き下ろしている。

    代体
    著者:山田宗樹
    発売日:2016年05月
    発行所:KADOKAWA
    価格:1,836円(税込)
    ISBNコード:9784041041260

    「いまはものすごい速さで世界が変わっている時代。社会情勢も、テクノロジーの進化も、2、3年前までは夢物語でしかなかったようなことが現実になろうとしている。だからこそ、小説にも思い切った、非現実的なくらいに進んだ要素をひとつ入れておくと、古びない物語ができるのではないかと期待しています」。これまでも『百年法』や『ギフテッド』といったSFの話題作を発表してきたが、本作でも同様のアプローチを取り入れた理由をこう語る。

    舞台はAI(人工知能)が発展し、高度な科学技術が生活に溶け込んだまだ見ぬ未来。しかし、その世界で人々が抱く、医療の進歩と生命倫理の問題や、心身の切り離せない関係など、生身の人間ならではの戸惑いや悩みは、いまを生きる我々の社会と地続きのものとして胸に迫る。その対比の鮮やかさも魅力のひとつだ。

    山田さんの創作の基本は「いかに読者に楽しんでもらうか」にある。本作も科学的な設定のおもしろさや先の読めないストーリー、キャラクターの多彩さなど、読みどころは満載。「ひょっとしたら自分にも関わることかもしれないと、我が事のように感じて、最後までその世界に没入してもらいたい」。読み手の“センチメント(感情)”を刺激する、一気読みのおもしろさが信条だ。

    その“センチメント”は本作の重要なキーワードでもある。人は社会の中で生活を営み、他者との関わりの中で生きていく。それは自分というものの形成と安定にも欠かせないこと。『代体』は自分の肉体と意識について考えさせられると同時に、〈特殊な環境〉におかれた人々の葛藤を通して、生きることの本質を問いかける物語でもある。心揺さぶられるエンターテインメントを心ゆくまで味わえる一冊だ。


    山田宗樹さん近影

    山田宗樹 Muneki Yamada
    1965年愛知県生まれ。筑波大学大学院農学研究科修士課程修了後、製薬会社で農薬の研究開発に従事。1998年に『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。2006年に『嫌われ松子の一生』が映画、ドラマ化され大ヒット作となる。2013年『百年法』で第66回日本推理作家協会賞を受賞。その他著作に『ジバク』『ギフテッド』などがある。

    百年法 上
    著者:山田宗樹
    発売日:2015年03月
    発行所:KADOKAWA
    価格:778円(税込)
    ISBNコード:9784041027097
    嫌われ松子の一生 上
    著者:山田宗樹
    発売日:2004年08月
    発行所:幻冬舎
    価格:617円(税込)
    ISBNコード:9784344405615
    ギフテッド
    著者:山田宗樹
    発売日:2014年08月
    発行所:幻冬舎
    価格:1,836円(税込)
    ISBNコード:9784344026209

    (「新刊展望」2016年7月号「著者とその本」より転載)

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