• 「色で老人を喰う」悪人たちの世界 黒川博行さん『後妻業』インタビュー

    2016年06月10日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当
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    〈黒川博行さんの『後妻業』文庫版がこのほど発売されました。単行本刊行時(2014年8月)のインタビューを再掲載します。〉

    後妻業
    著者:黒川博行
    発売日:2016年06月
    発行所:文藝春秋
    価格:799円(税込)
    ISBNコード:9784167906290

    映画製作の資金を巡る、主人公2人組と詐欺師との騙し合いやヤクザの本家筋との争いを描く『破門』で、第151回直木賞を受賞した黒川博行さん。受賞第1作は“後妻業”という「色で老人を喰う」裏稼業を描く犯罪小説だ。

    高齢者と再婚しては死別を繰り返し、遺産を奪う女・小夜子。彼女と結託する結婚相談所所長の柏木。2人のターゲットとなったのは91歳の老人・中瀬耕造。脳梗塞で倒れ、病院で息を引き取った耕造が生前に書いた公正証書は、「遺産のほとんどを小夜子が相続する」という内容だった―。父の遺産を取り返そうとする姉妹と弁護士、金の臭いを嗅ぎつけ小夜子と柏木を追い詰める興信所職員の本多。息をつかせぬスピーディな展開とリアリティに満ちた描写、そしてテンポの良い大阪弁に、ページを繰る手が止まらない。

    「後妻業」という耳慣れない言葉に注目したのは、常に鮮度の高い事件や話題を作品に取り込む黒川さんならではの視点のするどさだ。

    「『後妻業』という名称は、弁護士の間ではわりに知られていますが、世間では認知されていません。このような生業もあることを小説にしたら面白いと思いました」

    刻々と変化するのは犯罪の手口だけではない。時代とともに捜査の手法なども変わる。

    「例えば、今は車のナンバーから何月何日にここを通ったということがすぐさまわかる時代ですが、個人データについては管理が厳しくなり、管理職が職員番号を入れないと取れなくなりました。常に情報を取り入れないと、間違ったことを書いてしまいます。特に警察関係を書くのは大変です」

    作品後半は、事件の調査を依頼された本多が活躍。戸籍から小夜子の結婚歴を丹念にあたり、過去に不審な死亡事故があった現場を訪ね、聞き込みを重ねる。地道な調査が着実に小夜子と柏木を追い詰めてゆく。

    「本多は、事件の裏に隠された事情を次々と明らかにしていきます。探偵ではどうしても調べられないことは、昔同僚だった刑事を利用しますが、非常に不自由な捜査を強いられます。警察官でない人間が死因を知るためには、役所から死亡届と死体検案書を入手して……という辺りは読者にとって興味深いと思います。警察手帳を持っていない探偵を語り手にしたことで、リアリティが増して物語に深みが出ました」

    小夜子と柏木の「後妻業」を暴く本多も、決して正義の探偵などではない。あくまで彼を動かすのは金の臭いだ。

    「金銭欲、権力欲、保身、色欲。人間はそれらによって動いている存在だとしてずっと書いてきました。正義なんていうものには興味がありません」

    「小説を読んでいる数時間を楽しんで、面白いと思ってもらえればそれでいい」。犯罪のリアリティ、人間の生々しさをとことん突き詰めた世界には、エンターテインメントに徹する姿勢から生まれた強烈な「悪」の魅力が詰まっている。

    〈映画化情報〉
    『後妻業』は2016年8月27日(土)、「後妻業の女」のタイトルで実写映画が公開されます!

    映画「後妻業の女」では公開を記念して、作品の真髄である“愛とお金と男と女”をテーマとした「後妻業川柳」を大募集中! 優秀作品には超豪華賞品が当たります。応募方法などの詳細は、「後妻業川柳」特設ページにてご確認ください。

    〉映画「後妻業の女」公式サイト
    http://www.gosaigyo.com/

    〉「後妻業川柳」特設ページ
    http://info.toho.co.jp/gosaigyo_senryu/top.html


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    黒川博行 Hiroyuki Kurokawa
    1949年愛媛県生まれ。京都市立芸術大学美術学部彫刻学科卒業。大阪府立高校の美術教師を経て、1983年「二度のお別れ」が第1回サントリーミステリー大賞佳作。1986年に「キャッツアイころがった」で第4回サントリーミステリー大賞を受賞。1996年に「カウント・プラン」で第49回日本推理作家協会賞を受賞。2014年に『破門』で第151回直木三十五賞を受賞。著書に『繚乱』『落英』『離れ折紙』『勁草』など。


    (「新刊展望」2014年10月号「著者とその本」より)

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