• 辻堂魁「風の市兵衛」:時代小説文庫、いま読むならこの作家!⑥

    2016年04月21日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当
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    時代小説の中でも近年注目を集めている文庫書き下ろしから、特にいま読んでおきたい作家8人のシリーズを担当編集者が紹介する「時代小説文庫、いま読むならこの作家!」。今回ご紹介するのは辻堂魁さんの「風の市兵衛」シリーズです。

     

    気がつけば市兵衛に魅了されている、手に汗握って涙する、懐の深い時代小説!

    風の市兵衛
    著者:辻堂魁
    発売日:2010年03月
    発行所:祥伝社
    価格:669円(税込)
    ISBNコード:9784396335670

    人を討たずに、罪を断つ。辻堂魁の「風の市兵衛」シリーズは読後感爽やか、剣戟の迫力満点、しかも涙腺を刺激する、極上のエンターテインメント時代小説だ。

    主人公は、さすらいの渡り用人唐木市兵衛。五尺七、八寸近い背筋の伸びた痩軀。鼻筋が通った色白の奥二重に、いつも柔らかな微笑みを浮かべている。侍らしい腕っ節の強さや厳めしさを感じさせないのだが、13歳の冬から、奈良の興福寺で剣の修行を積んだ。僧侶たちとともに野山を駆け巡り、過酷な自然を相手に会得した〈秘剣風の剣〉の遣い手である。さらに、大坂に出て算盤と商いの仕組みを学んだことから、〈算盤侍〉と呼ばれ、武家や商家の生計を立て直す手伝いを生業としている。

    口入れ屋の矢藤太から仕事を紹介される市兵衛だが、なぜか面倒事に巻き込まれてしまう。しかし、懸命に問題解決を試みる彼の姿に、雇い主たちは次第に魅了されていく。市兵衛ならきっと何とかしてくれる、と心の底から信じていくのである。しかも、市兵衛は怒りに任せて悪人を斬るようなことはしない。雇い主にとって、最良の結果がもたらされるよう、必死で努力をするのだ。

    そんな市兵衛だから、仲間たちも多彩な顔ぶれだ。鬼しぶと渾名される定町廻り方渋井鬼三次、長崎帰りの人情味溢れる蘭医柳井宗秀、公儀十人目付で市兵衛の実の兄片岡信正、その配下で異形の強者返弥陀ノ介(かえりみだのすけ)等、全員が主人公になれる魅力の持ち主だ。

    本シリーズの醍醐味は、なんと言っても格闘シーンにある。刀対刀はもちろん、中国の武器や素手同士の戦いまで、毎回、手に汗握る決戦が目白押しなのだ。

    各巻ごとのストーリーはもちろん、1巻から繋がるシリーズのストーリーにも目が離せない。まさに、最旬の時代小説である。

    (祥伝社 文芸出版部 藤原圭一)

    辻堂 魁(つじどう・かい)
    1948年、高知県生まれ。作家。早稲田大学文学部卒業後、出版社に勤務。退社後、執筆活動に専念。迫真の剣戟と江戸情緒溢れる人の絆を描き、人気を博す。主な著書に「仕舞屋侍」シリーズ(徳間文庫)、「読売屋天一郎」シリーズ(光文社文庫)、『介錯人別所龍玄始末』(宝島社文庫)などがある。


    (「新刊展望」2016年4月号より転載)

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