• 岡本さとる「居酒屋お夏」:時代小説文庫、いま読むならこの作家!②

    2016年04月16日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当
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    時代小説の中でも近年注目を集めている文庫書き下ろしから、特にいま読んでおきたい作家8人のシリーズを担当編集者が紹介する「時代小説文庫、いま読むならこの作家!」。今回ご紹介するのは岡本さとるさんの「居酒屋お夏」シリーズです。

     

    町で噂の毒舌女将、夜は美しき始末人!

    居酒屋お夏
    著者:岡本さとる
    発売日:2014年06月
    発行所:幻冬舎
    価格:648円(税込)
    ISBNコード:9784344422070

    この作品の魅力は、「人が人を思う優しさに胸打たれる!」「お夏の小気味いい毒舌にシビれる!」「旬の食材を使った料理が美味そう!」です。こんなに心が洗われたような読後感に浸れる小説はそれほど多くはありません。第一巻の原稿を拝読した時(著者の岡本さとるさんの原稿は今どき珍しい手書きです。この手書き原稿の風合いもまた素晴らしい!)、僕は「他人を慮る優しさこそが、人間の証なんだな」と思いました。

    舞台は居酒屋なのですが、女将のお夏の存在感がたまりません。口は悪いのですが心根が温かいので、飛び交う罵詈雑言でさえ心地いい。こんなふうに叱られたいとさえ思います。お夏の右腕とも言える料理人の清次は、高倉健さんみたいに渋くて、これまた素敵です。しかも彼の作る料理は、どれもとびっきり美味そう。

    このお夏、過去が謎めいています。彼女の過去が明らかになっていくのも本シリーズの醍醐味の一つですが、曲がったことが大嫌いなお夏は、誰かが理不尽な目にあっていると知ったら、人知れず動くのです。殺された遊女のために動き、貧乏浪人父子のために動き、道を踏み外しそうな若者のために動く。時に剣で、時に計略で、「悪い奴ら」をやっつけるその姿は実に痛快! 人の優しさに心洗われ、剣戟の激しさにドキドキする――。読んだらきっとみなさんも本シリーズの虜になるはずです。未読の方はぜひ読んでみてください。

    (幻冬舎 編集本部 第一編集局 有馬大樹)

    岡本さとる(おかもと・さとる)
    1961年、大阪市生まれ。立命館大学卒業後、松竹入社。松竹株式会社90周年記念新作歌舞伎脚本懸賞に「浪華騒擾記」が入選。その後フリーとなり、「水戸黄門」「必殺仕事人」などのテレビ時代劇の脚本を手がけ、現在も数多くの舞台作品において脚本家、演出家として活躍する。
    2010年、『取次屋栄三』(祥伝社文庫)で小説家デビュー。他に「剣客太平記」(角川春樹事務所 時代小説文庫)シリーズがある。

    ***

    ③ 芝村凉也「素浪人半四郎 百鬼夜行」を読む


    (「新刊展望」2016年4月号より転載)

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