• 最後の「髪結い伊三次捕物余話」、宇江佐真理さん『擬宝珠のある橋』

    2016年04月25日
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    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当
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    惜しまれつつ亡くなった宇江佐真理さんの、人気シリーズ最終巻『擬宝珠のある橋』。担当編集者の方に作品ガイドを寄せていただきました。

    擬宝珠のある橋
    著者:宇江佐真理
    発売日:2016年03月
    発行所:文藝春秋
    価格:1,890円(税込)
    ISBNコード:9784163904177

     

    『擬宝珠(ぎぼし)のある橋』 最後の「髪結い伊三次捕物余話」

    昨年、宇江佐真理さんが亡くなられてから、編集部に読者の方からたくさんのお電話、おたよりをいただきました。「伊三次シリーズはこれからどうなるのか」「最後の巻はいつ刊行するのか」というお問い合わせですが、それに加えて、みなさんそれぞれに宇江佐作品への思いを語ってくださいます。そんなファンの方々の声に、あらためて「髪結い伊三次捕物余話」がいかに愛されていたかを実感しました。

    この『擬宝珠のある橋 髪結い伊三次捕物余話』は、「オール讀物」にいただいた最後の3篇と、文庫書き下ろしでいただき、単行本には未収録になっていた「月は誰のもの」、そして伊三次シリーズについての短いエッセイを収録したものです。シリーズ15巻目で、最終巻となります。

    収録された作品は、闘病中に書かれたとは思えないほど力がこもったもので、とくに表題作の「擬宝珠のある橋」は、伊三次シリーズの集大成ともいうべき一篇です。亭主と離縁しほかの男と再婚したものの、あとに残してきたもとの舅の暮らしぶりが気になる……という女性のために伊三次がひと肌ぬぐ話ですが、とても清々しく、気持ちのよい終幕をむかえます。さまざまな家族の姿を描いてきた宇江佐さんですが、ここにある家族愛のかたちは、複雑であるがゆえにまた格別で、印象的な伊三次の台詞もあいまって、胸が熱くなってしまいます。

    伊三次の息子である伊与太の将来、松前藩に奉公に出ている茜の運命など、気になることはたくさん残っていて、もっと書いていただきたかった、という気持ちは、私も読者の方と同じです。しかし、このシリーズは、宇江佐さんが敬愛されていた藤沢周平さんの作品群のように、きっと長く読み続けられるものになるでしょう。シリーズ最後の1冊、というと悲しい気持ちになりますが、まずはいつものように、伊三次の活躍を楽しんでいただければと思います。

    文・文藝春秋 文藝局第二文藝部 加藤彩子


    (「新刊展望」2016年5月号「エディターの注目本ガイド」より転載)

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