元キュレーター・原田マハさんの新刊『暗幕のゲルニカ』は、ピカソの名作を巡るアートサスペンス!

2016年04月22日
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日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当
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10歳の時に、大原美術館でピカソの〈鳥籠〉を見て衝撃を受けて以来、「ずっとピカソを追いかけ続けてきた」と語る原田マハさん。『暗幕のゲルニカ』は、ピカソに導かれ、アートの世界とも深い関わりを持つ著者が、その「巨大な導師」と満を持して向き合った「本気の一作」だ。

暗幕のゲルニカ
著者:原田マハ
発売日:2016年03月
発行所:新潮社
価格:1,728円(税込)
ISBNコード:9784103317524

ニューヨーク近代美術館(MOMA)のキュレーターである八神瑶子は、2001年9月11日、世界中を震撼させたアメリカ同時多発テロ事件で最愛の夫を失う。その悲しみの中、瑶子はアートの力で平和の意義を広く問うため、ある展覧会を企画する。しかし、彼女が目にしたのは、米国国務長官が国連安保理議場のロビーでイラク進攻を報告する映像。そして、その背後にあるはずの、ピカソが戦争の愚かさを渾身の力で描いた〈ゲルニカ〉のタペストリーには暗幕がかけられていた─―。

一方、第二次大戦前のパリ。故郷・スペインでのゲルニカ空爆を知ったピカソは、縦3.5メートル、横7.8メートルの大作〈ゲルニカ〉を完成させる。その制作を見守り、写真家として記録を残したのはピカソの愛人であり、良き理解者であったドラ・マール。

戦争という人類の最も醜い行為を見せつけ、反戦のシンボルとなった〈ゲルニカ〉の揺るぎないメッセージ性と、作品がはらむ思いや時代の様相。史実を交え、2003年のニューヨークと1937年のパリを舞台に2つの物語が交錯し、アートの力を信じる人々の闘いがサスペンスフルに描かれる。

小説を書く時も、美術館で作品を見る時も、常に自分の中に時間軸を持っている。「時代や場所、アーティストの周りにいた人物など、背景にあるものを読み解いていくことで、作品に深みが出ます。特に〈ゲルニカ〉はタイムカプセルのように多くのエピソードがこめられているので、取り組み甲斐がありました」

テロや天変地異といった、自分たちでは避けようのない恐怖の中にいる現代だが、「どんなに恐怖が世界を覆い尽くしても、表現すること、アートがこの世からなくなることはないでしょう。それは人類にとって一筋の光であるし、そういうことを目指させてくれるのがピカソの作品」。自身も「アートに何ができるのかという希望の灯」を本作に込めている。

原田さんにはルソーの〈夢〉を題材にピカソとルソーという2人の天才画家を描いた小説『楽園のカンヴァス』がある。同書の読者には「私が本当はピカソのことを書きたいのではないかと気づいている方がとても多いのですが、まさにその通りなんです。ずっと書きたかったピカソについてようやく書くことができたし、この小説には現代社会が共有する問題をぶつけています。こんなことをいうと天国のピカソに怒られそうですが、私は彼とは勝手に師弟だと思っているので(笑)、『暗幕のゲルニカ』を私たちからのメッセージとして受け止めてもらえればうれしいです」。


原田マハ(C:森栄喜)

原田マハ Maha Harada
1962年、東京生まれ。関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学第二文学部美術史科卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事を経て、森ビル森美術館設立準備室在籍時、ニューヨーク近代美術館に派遣され同館にて勤務。2005年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、デビュー。2012年に発表したアートミステリ『楽園のカンヴァス』(第25回山本周五郎賞受賞)は話題を呼び、ベストセラーに。その他の作品に『ロマンシエ』『モダン』『異邦人(いりびと)』『ジヴェルニーの食卓』などがある。

カフーを待ちわびて
著者:原田マハ
発売日:2008年05月
発行所:宝島社
価格:494円(税込)
ISBNコード:9784796663526
楽園のカンヴァス
著者:原田マハ
発売日:2014年07月
発行所:新潮社
価格:724円(税込)
ISBNコード:9784101259611
ジヴェルニーの食卓
著者:原田マハ
発売日:2015年06月
発行所:集英社
価格:605円(税込)
ISBNコード:9784087453270

(「新刊展望」2016年5月号「著者とその本」より転載)

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