• 〈インタビュー〉西條奈加さん『ごんたくれ』 二人の絵師の数奇な生き様を描く

    2015年05月16日
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    日販 商品情報センター「新刊展望」編集部
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    時代小説、現代が舞台の小説、SFファンタジーなどさまざまな世界の物語を描く西條奈加さん。『ごんたくれ』は、江戸時代の京都に生きる二人の絵師の人生、表現者の矜持と苦悩を描いた小説だ。

    ごんたくれ
    著者:西條奈加
    発売日:2015年04月
    発行所:光文社
    価格:1,620円(税込)
    ISBNコード:9784334910211

    当代一の誉れ高い絵師である円山応挙(まるやまおうきょ)の弟子・吉村胡雪(よしむらこせつ)こと彦太郎。応挙の作品を絵ではなく絵図だとこき下ろし、我こそ京随一の絵師と豪語する深山筝白(みやまそうはく)こと豊蔵。彦太郎が豊蔵を殴りつけるという最悪の出会いから、会うたびに喧嘩の二人。しかし絵師としては互いに認め合い、それぞれ名声を高めながら数奇な人生を歩んでいく。

    モデルとなったのは、後に「奇想の画家」と評される絵師、長沢芦雪(ながさわろせつ)と曾我蕭白(そがしょうはく)だ。事物の姿形に忠実な写生画を描く応挙とは対照的に、彼らの絵は躍動感に満ちている。時に奇抜なアイデアで見る者を楽しませ、また時には禍々しい情念を纏う。

    「以前から絵を見るのが好きで、日本画の絵師の話を書いてみたいと思っていました。あるとき辻惟雄さんの『奇想の系譜』を読み、芦雪と蕭白がかなりの変わり者だと知って。小説のキャラクターとしてはうってつけだと思い、この二人を軸に書くことにしました」

    時は江戸中後期、安永から寛政年間。今まで数多くの時代小説を世に送り出してきた西條さんだが、この時代を描いたのは初めて。

    「これまでは江戸時代でも1800年代以降を専ら書いていました。この年代を境に、時代劇に登場する事物が出揃うので、現代人にも馴染みやすいのです。この小説の舞台はもう少し前の時代で、芦雪と蕭白以外にも池大雅(いけのたいが)、円山応挙、伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)など、個性的な絵師が数多く活躍していました。火災で焼失した御所の再建の際にも、初めて江戸ではなく京都の画家が集められるなど、京画壇の黄金期ともいえる魅力的な時代です」

    武士の家を飛び出し、応挙の下でも異端を貫く彦太郎。誰に対しても臆することなく、歯に衣着せぬ物言いの豊蔵。頑固で困り者、「ごんたくれ」な彼らの生き方は西條さん自身に通じるものがあるという。

    「私も昔は人と一緒にいるのが苦手で、社会に馴染まなかったので、こういうひねくれた人物は共感できるんです。人に興味はあるけれどコンプレックスも強くて、物を斜めに見て、それをそのまま口に出して周りから浮いて。二人とも性格は可愛くないし素行は悪いし、どう読者に受け入れてもらおうか悩みました」

    西條さんの物語では、時代小説においても登場人物がみな現代人と同じ視点や感覚で考え行動し、親しみや共感を誘う。〈わしらはとどのつまり、人が好きで好きでたまらんのや〉と語る豊蔵。「ごんたくれ」の彼らもまた、強烈な自意識にもがく姿、にじみ出る人間臭さが哀れで、いとおしい。

    「絵師たちの物語ですが、絵にあまり興味のない方にも楽しんでもらうのが一番の望みです。小説を読む間、他のことを忘れて物語に浸る、そんな時間を提供したいと思っていつも書いています」

     


    西條奈加さん西條奈加
    さいじょう・なか。1964年北海道生まれ。2005年に『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年、『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞を受賞。15年、『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞。近著に『いつもが消えた日 お蔦さんの神楽坂日記』『上野池之端 鱗や繁盛記』『六花落々』『睦月童』など。


    (「新刊展望」6月号「著者とその本」より転載)

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