長新太キャリア17年、灰谷健次郎デビュー直後の絵本『ろくべえまってろよ』

2016年03月19日
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日販 商品情報センター 馬場進矢
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今年は長新太さんの没後10周年です。書店ではフェアが開催され、絵本・児童書の人気サイト「絵本ナビ」でも特集記事が組まれています。

〉絵本ナビ【長新太没後10年記念連載】担当編集者&絵本作家インタビュー
http://www.ehonnavi.net/style/110/

ごろごろにゃーん
著者:長新太
発売日:1984年02月
発行所:福音館書店
価格:972円(税込)
ISBNコード:9784834009668

代表作の一つ『ごろごろにゃーん』(福音館書店/1976年)は、ざっくり言うと「猫たちが飛行機に乗って飛んでいく」だけの話なのですが、ページをめくるたびにひとりで吹き、子どもたちに読み聞かせると笑顔を見ることができます。

長さんは多作な方で、単著はもちろん、寺村輝夫先生との『おしゃべりなたまごやき』(福音館書店/1972年)を筆頭に多くの共著があります。中でも長さんが48歳のときに「41歳の新人作家」と組んだ1975年の作品は、私にとって非常に印象的なものなのでした。その絵本は『ろくべえまってろよ』(文研出版)というものです。

ろくべえまってろよ
著者:灰谷健次郎 長新太
発売日:1975年01月
発行所:文研出版
価格:1,404円(税込)
ISBNコード:9784580813939

小説新潮の臨時増刊「灰谷健次郎まるごと一冊」(1997年7月刊)で、灰谷先生が『ろくべえまってろよ』についてコメントしています。

はじめての絵本。松田司郎さんという編集者から、生まれてはじめて注文。これはほんとにうれしかったね。

(「灰谷健次郎まるごと一冊」p.221より)

つまり『ろくべえまってろよ』は、灰谷健次郎さんの絵本デビュー作なのです。刊行されたのは、灰谷健次郎さんが『兎の眼』(理論社/1974年)で小説デビューした翌年。商業絵本の文章を書くのは初めてだった灰谷先生ですが、対する長さんが絵本デビューしたのは1958年。デビュー作『がんばれさるのさらんくん』(福音館書店)以降、『ろくべえまってろよ』を描いた時点で、挿絵も含め60冊以上のキャリアがありました

本作は、今日では大御所2人による作品のように捉えられていますが、発売当時は「キャリア抱負な画家が新人作家と組んだ絵本」だったのです。

作家のひこ田中先生のホームページにて、本作のベース作品『ろくべい』のシナリオが公開されています。

〉シナリオ「ろくべい」灰谷健次郎作
http://www.hico.jp/ronnbunn/matudasirou/pejinonakanokodomotati/146-149.htm

『ろくべえまってろよ』と比較してみると、言葉に「教育的配慮」が施されたことが伺えます。児童書は作り方が難しいです。そして、そもそもよかったこのシナリオに、あの劇場性を持たせることができたのは、長さんのセンスだったのだと思います。

▼本文縦書き・右開きの構成で進む中、いきなり見開きページを縦に大胆に使ったこのシーン。ろくべえが落ちた穴の深さと子どもたちのどうしようもなさが表現されていて、とても印象的です。

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ただ、読み聞かせるときには持ち替えなくてはいけないので、読み手は忙しいです。

▼構成としては、「ひまそうなひと」が通りかかるシーンがアクセントになっています(p.18)。このシーンが「物語の息抜き」となり、後半の怒涛の展開が生きてくるのです。

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読み進めると「結局、ろくべえは誰の犬なのか?」「なぜ街中にこんなに深い穴があるのか?」という疑問が湧いてきます。これらはメタファーであり、内容についての解説は、本作を灰谷先生へ発注した松田司郎さんによるものが屈指です。

〉『ページのなかの子どもたち・作家論』(松田司郎:著/五柳書院/1984年)
http://www.hico.jp/ronnbunn/matudasirou/pejinonakanokodomotati/119-145.htm

「読み聞かせに向いている絵本は、物語と絵がしっかりした絵本」と言いますが、本作はまさにその通りの一冊だと思います。


※『ナンセンス絵本の王様 長新太の世界』(トムズボックス)参照

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