〈インタビュー〉『冒険の森へ』刊行開始!編集委員の北方謙三さんに聞きました

2015年05月12日
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日販 商品情報センター「新刊展望」編集部
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本日5月12日刊行スタートの、集英社創業90周年記念企画『冒険の森へ 傑作小説大全』。逢坂剛、大沢在昌、北方謙三、船戸与一、夢枕獏という当代きっての作家5人を編集委員に迎え、ジャンルを超えて「小説の面白さ」を追求した画期的なアンソロジーだ。
そのコンセプトから全集にかける思い、編集過程のエピソードまで、編集委員を代表して、北方謙三さんにお話を聞いた。

冒険の森へ傑作小説大全 11
著者:逢坂剛 大沢在昌 北方謙三 船戸与一 夢枕獏
発売日:2015年05月
発行所:集英社
価格:2,160円(税込)
ISBNコード:9784081570416
冒険の森へ傑作小説大全 16
著者:逢坂剛 大沢在昌 北方謙三 船戸与一 夢枕獏
発売日:2015年05月
発行所:集英社
価格:2,160円(税込)
ISBNコード:9784081570461

面白い」がすべて

「『冒険』というと冒険小説を集めた全集かと思われるのですが、そうではありません。日本には物語の豊饒な森がある。その森に面白さを見つける冒険に出かけましょうよということです。5人の編集委員は実作者で、やるべきことは他にある。それは自分の小説を書くことです。小説の面白さとは何か、それを書いている自負があって、その上で小説のために何ができるか。人間が小説を持っていて良かったね、と思えるようなものを作りたかった」

その思いがあればこそ、収録作の選定基準は「面白さ」がすべて。

「心を揺さぶられるもの、涙が出るもの、この小説に救われたな、この小説があって良かったなと思えるもの。面白さこそが小説の本質なので、誰もが楽しめる、普遍的な価値を持つだろう小説を土台に選んでいます。なのでジャンルは問いません」

「そうした小説の面白さに関しては、編集委員全員が同じ気持ちです。ただ、5人とも作家を40年やっていて、自分の読書歴からこれぞという作品を出してくる。読書の方向もそれぞれ違うので、とんでもないことになります。私が薦めたもので彼らが読んでいないものもあるし、その逆もある。そうすると、お互いそれをすべて読まないと話にならない」

5人が5人とも説明不要の人気作家である。創作の質と量を維持しながら様々な文学賞の選考に携わり、その一方で全集に収録するための候補作を読んでいくのは、想像を絶する大変さだろう。

「ラインナップには意外なもの、知らないものもたくさんあると思います。我々も長編はほとんど読んでいますが、誰かが出してきた短編を『えっ、これ?』と思って読んでみたら、『いいじゃないか』と。しかもそれぞれにいろんなエピソードがある。それは、発見というより新鮮な体験でした。賞の選考のためと自分が書いている小説の資料と、ほとんど仕事でしか読書をしなくなっていたので、改めて小説を読み直すという経験になりました」

冒険やハードボイルドはもちろん、純文学、ホラー、時代小説から童話まで、ありとあらゆる「小説の面白さ」を詰め込んだ全20巻、254編。各巻1、2編の長編を核にしてタイトルをつけ、短編、掌編をそのテーマに沿って組み合わせていく作業には苦心したそう。

その中で北方さんのお薦めは、と問うと、「第1回配本から読んでいただきたい気持ちはありますが、おそらくこういう全集には入ってこないだろう冒険ファンタジーの景山民夫『遠い海からきたCOO(クー)』、パニック小説として知られる西村寿行『滅びの笛』などを読んでもらいたいですね。あとはハードボイルドの五木寛之『裸の町』ですが、私個人のお薦めよりも、まずは1巻のラインナップを見てください。井上靖『敦煌』と江戸川乱歩『白髪鬼』という対極にいる作家の作品を並べています。井上靖は非常に高い文学性を持ちながら、エンターテインメント性もある。江戸川乱歩の小説が持つ大衆性や通俗性は、積み重ねるとその先に違ったものが見えてくる。つまり1巻は、この二人の間で作品を選んでいますよという我々の宣言です。そこに存在する2000年までの小説の中から、長編・短編にかかわらず面白い作品を入れています」。

「たとえば大藪春彦の小説はドンパチのイメージが強いかもしれませんが、『野獣死すべし』は僕や船戸が推して収録しています。この作品と石原慎太郎の『太陽の季節』は文学史上に併記される作品だと思うからです。『太陽の季節』は、青年の反抗という形で戦後民主主義の欺瞞を暴いた。一方『野獣死すべし』は、戦後民主主義を殺戮という行為で否定した最初の小説です。しかも、その先にもっと新しいものがあるだろうと投げかけている。そういった意味で、この作品が読者に与えた衝撃は大きいです」

『冒険の森へ』は、全集ならではの解題と解説が充実しているのも魅力だ。名だたる文芸評論家が解題を担当し、編集委員をはじめ、錚々たる人気作家たちが解説を書いている。文学的な位置づけや作品の読みどころなどいろいろな角度から小説に触れることで、読書の幅も大いに広がるはずだ。

(2015年4月16日取材)


北方謙三さん

北方謙三
きたかた・けんぞう。作家。1947年佐賀県生まれ。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。著書に『眠りなき夜』(吉川英治文学新人賞)、『渇きの街』(日本推理作家協会賞)、『破軍の星』(柴田錬三郎賞)、『楊家将』(吉川英治文学賞)、『水滸伝』(全19巻・司馬遼太郎賞)、『独り群せず』(舟橋聖一文学賞)、『楊令伝』(全15巻・毎日出版文化賞特別賞)等多数。


 

編集委員の船戸与一氏が、4月22日に逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

(「新刊展望」6月号特集記事より一部抜粋。続きは本誌で!)
common_banner_tenbo集英社全巻セット『冒険の森へ』各巻の内容と刊行予定

①漂泊と流浪〈江戸川乱歩「白髪鬼」/井上靖「敦煌」他14編〉
第10回配本・2016年3月4日発売

②忍者と剣客〈山田風太郎「甲賀忍法帖」/柴田錬三郎「赤い影法師」他8編〉
第19回配本・2016年12月5日発売

③背徳の仔ら〈黒岩重吾「裸の背徳者」/大藪春彦「野獣死すべし(付・復讐篇)」他11編〉
第16回配本・2016年9月5日発売

④超常能力者〈小松左京「エスパイ」/半村良「黄金伝説」他8編〉
第15回配本・2016年8月5日発売

⑤極限の彼方〈田中光二「大いなる逃亡」/新田次郎「八甲田山死の彷徨」他10編〉
第2回配本・2015年7月3日発売

⑥追跡者の宴〈五木寛之「裸の町」/生島治郎「男たちのブルース」他11 編〉
第18回配本・2016年11月4日発売

⑦牙が閃く時〈西村寿行「滅びの笛」他15編〉
第12回配本・2016年5月2日発売

⑧歪んだ時間〈浅田次郎「地下鉄(メトロ)に乗って」/山田正紀「竜の眠る浜辺」他12編〉
第5回配本・2015年10月5日発売

⑨個人と国家〈伴野朗「三十三時間」/胡桃沢耕史「ぼくの小さな祖国」他10編〉
第17回配本・2016年10月5日発売

⑩危険な旅路〈船戸与一「夜のオデッセイア」/矢作俊彦「リンゴォ・キッドの休日」他12編〉
第13回配本・2016年6月3日発売

⑪復活する男〈飯嶋和一「汝ふたたび故郷へ帰れず」/北方謙三「檻」他11編〉
第1回配本・2015年5月12日発売

⑫法の代行者〈逢坂剛「百舌の叫ぶ夜」/大沢在昌「毒猿 新宿鮫Ⅱ」他7編〉
第6回配本・2015年11月5日発売

⑬飛翔への夢〈佐々木譲「ベルリン飛行指令」他16編〉
第9回配本・2016年2月5日発売

⑭格闘者の血〈夢枕獏「餓狼伝I」/今野敏「惣角流浪」/中島らも「超老伝 カポエラをする人」他8編〉
第8回配本・2016年1月5日発売

⑮波浪の咆哮〈椎名誠「水域」/景山民夫「遠い海から来たCOO(クー)」他12編〉
第11回配本・2016年4月5日発売

⑯過去の囁き〈志水辰夫「行きずりの街」/花村萬月「なで肩の狐」他10編〉
第1回配本・2015年5月12日発売

⑰私がふたり〈東野圭吾「分身」他14編〉
第3回配本・2015年8月5日発売

⑱暗黒の街角〈馳星周「不夜城」他12編〉
第14回配本・2016年7月5日発売

⑲孤絶せし者〈真保裕一「ホワイトアウト」他10編〉
第7回配本・2015年12月4日発売

⑳疾走する刻〈宮部みゆき「スナーク狩り」/福井晴敏「川の深さは」他7編〉
第4回配本・2015年9月4日発売

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