「自分の暮らす町にあったらいいなと思う本屋」 新刊書店「Title」まもなくオープン

2016年01月08日
本屋を歩く
ほんのひきだし編集部
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1月10日(日)、東京都・荻窪に「Title(タイトル)」という名前の新刊書店がオープンします。店主は、リブロ池袋本店でマネージャーを務めていた辻山良雄さん。今回はオープンを間近に控えたTitleについて、辻山さんにお話を伺いました。

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〉本屋「Title」公式ウェブページ
http://www.title-books.com/

***

―Titleは新刊書店ということですが、「こんな書店がいいな」というイメージは何となくあったんですか?

「古本も好きですが、これまでずっと新刊書店にいたこともあって新刊書店を作りました。これまで会ってきた方とのお付き合いが続くというよさもありますね。でも何よりも、いま生きている人に対して『こういう本がいいですよ』と勧めたいというのが大きいです。新刊はいまの時代、いま生きている人に読んでもらうために生まれてくるものだと思うんですよ。そのサイクルの中に入っていたいなと」

「あとは(立地が)住宅街ですし、いろんな方がいらっしゃると思うんですよね。決まった作家の本しか読まないとか、そもそも書店にあまり行かないとか。その人にとっての大切な一冊というのもその人それぞれなので、気取ったお店を作るよりも、できるだけ敷居の低いお店にしたいと思っています」

「とはいえせっかく個人でやるんだから、自分らしさも出したい。なので、本屋になければならない基本の商品を揃えつつ、こだわった物も少し棚に入っているという感じの書店になっていくと思います」

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辻山さんらしさが漂う「4:6」の品揃え

―特に文脈のある棚を作るというわけではなく、全体が、ちょっとしたところに辻山さんらしさの垣間見える棚になっているということですね

「たとえば『泣きたい日の本棚』とか、そういうテーマの棚があったとして、作った側には思い入れがあるだろうし、それでいいんですけれど、知らずにお店に入った人にとっては『そんなこともないな』ということがありますよね」

「なので雑誌があって、文庫があって、新刊コーナーがあって……という皆にとっての“本屋”は崩しません。とはいってもすべて自分の目で選んで仕入れていますので、特別に『文脈棚』を作らなくても自分らしさは出ていると思います。お店に来た人が『何となく好みが合うな』という世界になれば、それが一番いいですね」

―いわゆる “基本の商品” と “辻山さんらしさ” は、どのくらいのバランスになるのでしょうか。

「Titleを作る際に書いた企画書には、『4:6』と書いてあるんです。自分で一冊一冊選ぶものが『4』で、書店として揃えておくべき“世の中的に売れている本”が『6』。裾野は広いけれど本好きにとっては面白くないものも、通好みなものもどちらもTitleには必要です。先ほど言ったように結局『6』も自分で選んでいるので、トーンとしてはどちらもわりと似ているかもしれませんが……」

―品揃えに関して「絶対にこれはないといけない」というものはありますか?

「ありますね。特に絵本には多いです。いわゆるロングセラーというか、たとえばバージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』や中川李枝子さん・山脇百合子さんの『ぐりとぐら』のような “本質的な本” はなくてはいけないと思っています。人文書なら『夜と霧』があったり、夏目漱石の著書が揃っていたりというイメージです」

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駅近でなくあえて住宅街を選んだ理由

お店は、JR荻窪駅から青梅街道沿いに西へ歩いて10分ちょっとのところにある看板建築風の一軒家。駅前の喧騒から少し離れた、地元の人々が行き交う通りにTitleはあります。

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―駅の近くではなく住宅街を選んだのには、何か理由があるんでしょうか?

「最終的には『そこに良い物件があったから』ということに尽きるんですが、並木があって、その中にぽつんと店があるというところが理想に近かったんです」

「駅前を選ばなかったのは、ゆっくりしたリズムの空気が流れているところに広々と本を置きたかったからです。そういう意味でも駅から徒歩10分ちょっとの一軒家はちょうどよかった」

※Titleはもともと民家で、約3か月かけてご自身でリノベーションされたそうです(写真は2015年12月中旬に撮影したもの)

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Titleが街の人にとって落ち着く場所になるといい

Titleは2階建てで、1階には本のほかに雑貨や喫茶のスペース、2階にはギャラリーを設けるそうです。

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―最近雑貨やカフェを導入する書店が増えていますが、Titleの喫茶スペースはどのような感じになるのでしょうか?

「今のお客さんは、雑貨にしろカフェにしろ、いろいろな店を知っています。だから取ってつけたようなものは、絶対見透かされるんですよね。はっきりとは分からなくても『なんとなく違和感があるな』と」

「そこに必然性があって場所とお店に合っていれば、カフェが併設されていても売り場に雑貨があってもいいと思っています。むしろ『あって当たり前』という感じだときちんと売れるんです。粗利がよくても売れないと仕方がないし、むしろ無理やり並べると嫌がられることもありますから」

―“質感が違う”というんでしょうか。

「そうですね。Titleは建物からしてこんな感じなので、置く本も雑貨も質感が合うものを仕入れる、合わないものは仕入れないという方針です。開業にあたってはさすがに利益構造を試算して説明したりもしましたが、それは根本的な理由ではないです。もちろん原価の安いお茶は売れれば売れただけ嬉しいですが(笑)、それありきではないですね」

「Titleには8席の小さな喫茶スペースがありますが、やっぱりゆっくりしたリズムの街なので、食べたり飲んだりして落ち着く場所にしたいなと思っています」

―喫茶へのこだわりはありますか?

「コーヒーですね。ブレンドは自分たちで調合して、浅煎りと深煎りの2種類を用意しています。あとはお酒の種類も多いですよ。ワインはワイナリー見学にも行きました。何も分からないで飲むより、バックグラウンドを知って飲むほうがおいしく感じるので」

***

―いよいよ1月10日にオープンの日を迎えますね。

「先ほど『4:6』の話をしましたが、いらっしゃるお客さんや街の皆さんと交わることで、きっとTitleも少しずつ変化していくんだろうと思います。これからTitleが荻窪の街に溶け込んだ本屋になるといいですね」

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Title(タイトル)

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住所:東京都杉並区桃井1-5-2(MAP
営業時間(予定):11:00~21:00(カフェは20:00にラストオーダー)
定休日:毎週水曜・第三火曜
※イベント時はクローズする場合あり
※カフェはオープン後しばらくドリンクのみの営業
http://www.title-books.com


(取材日:2015年12月15日 ※一部の写真は1月初旬に撮影)

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