• 要注目ジャンル「キャラクター小説」への挑戦 エブリスタ×未来屋書店の「ココロ動かす本」フェア

    2018年12月22日
    本屋を歩く
    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    現在、全国の未来屋書店98店舗にて「ココロ動かす本」フェアが開催されています。

    「ココロ動かす本」フェアとは、10~20代を対象とした児童書・ライト文芸から約35作品を選び、〈きゅんきゅん〉〈ゾクゾク〉〈ほろり涙〉といった“ココロの動き”にもとづいて「新しい本との出会い」を提供することを目的としたキャンペーンです。

    対象書籍はすべて小説投稿サイト「エブリスタ」発の書籍化作品。

    また、期間中に未来屋書店公式アプリをダウンロード・会員登録すると、今年7月に書籍化されたエブリスタ連載の人気作『あなたと私の関係は?』の書き下ろし限定短編を無料で読むことができます。

    「10~20代の若年層をターゲットに」「文芸作品で」「未来屋書店で」フェアを開催したのはなぜなのか?

    今回フェアでタッグを組んだエブリスタ・未来屋書店の担当者お二人に、その狙いを伺いました。

    (写真左から)未来屋書店 中道峻さん(商品部 商品企画グループ)、エブリスタ 松田昌子さん

    「ココロ動かす本」フェア
    ・2018年11月10日(土)~12月31日(月)
    ・実施書店:全国の未来屋書店98店舗
    ・対象作品:エブリスタ発の書籍化作品約35作

    http://blog.estar.jp/archives/34461844.html

     

    未来屋書店の“強み”と、抱えていた“課題”

    ―― まずはフェア実現の経緯を教えてください。

    松田:今回のフェアは、私たちエブリスタ側から未来屋書店さんにお声がけしました。小説投稿サイトの作品はほとんどが“無名の書き手による作品”で、「高尚な権威づけや学術的な裏付けがなくても、楽しく読める」というのが売りです。そういう意味で、ショッピングモールに併設されている未来屋書店さんとの相性は、かなりいいのではないかと常々思っていました。

    ――「わざわざ本を買いに行く」というよりも、普段から足を運ぶ場所にあって、ふらっと立ち寄れる書店ということですね。

    松田:そうですね。従来ですと「エブリスタと各出版社さん」「出版社さんと未来屋書店さん」の間でやり取りしており、直接的なつながりはなかったのですが、ご挨拶に伺ったところトントンと話が進んでフェアが実現できることになりました。全国的な規模で展開していただくのはこれが初めてで、大変ありがたいです。

    ―― トントン拍子で実現に至ったということですが、未来屋書店としては、今回の提案のどんなところに着目されましたか?

    中道:未来屋書店が全社的な課題として抱えていたことと、いただいたご提案がぴったりマッチしていました。正直なところ、本当に「渡りに舟」というべきタイミングでした。

    ―― というのは……。

    中道:未来屋書店は多くの店舗がショッピングモールに併設されているので、ファミリーのお客さまが多く来店されます。まだ行動範囲が広がっていない小中学生の生活圏内にあるという側面も大きいですね。ですので、「キッズ・ティーン向けの商品がよく売れるところに自社の強みがある」という認識自体は持っていました。実際に中学生に人気の雑誌「nicola」の法人シェアは未来屋書店がトップと伺っています。

    その一方で、「キャラクター小説」というジャンルが今どんどん売上規模を拡大していて、こちらは中高生を対象に弊社でも勢いよく成長しています。ただ商品としての位置づけは「数多ある小説のなかの1カテゴリ」という当初の認識からあまり変化がなく、品揃えや売り場づくりが十分にできていませんでした。

    われわれが感じていたのは「需要の伸びに対して、書店側からの提案が足りていない」ということ。それを見直し、未来屋書店として「キャラクター小説」というジャンルを確立させたい。そんなときに、まさにぴったりの作品を提供していて、発信力もあるエブリスタさんにお声がけいただいた。われわれとしては“始めの一歩”を踏み出すチャンスだろうと。そういうことで、「ぜひ」とお答えしました。

     

    キャラクター小説の特性と、「ココロ動かす本」という切り口の理由

    ―― ターゲット層についてもう少しくわしく伺いたいです。フェアに連動したアプリ会員登録キャンペーンの特典は、『あなたと私の関係は?』の書き下ろし短編。高校生のときに好きだった先生と再会し恋愛関係に発展していくという、女性向けの人気シリーズですよね。

    中道:未来屋書店のお客さまは、圧倒的に女性が多いです。お客さま全体で見ると7割、10代のお客さまだけに絞っても、その6割を女性が占めます。

    今回ご提案いただいたエブリスタさん発の作品ラインアップも、読者の性別に偏りのなさそうなものももちろんありますが、どちらかというと女性寄りのものが多かった印象です。

    松田:エブリスタ発の作品では『カラダ探し』『食糧人類』『生贄投票』といった男性向けホラーコミックも人気ですが、女性向けの恋愛作品も強い人気を誇っています。「キャラクター小説」というジャンルも、近年は女性の割合が高まっているので、今回のフェアでは女性をメインターゲットとしました。

    中道:そもそもの商品構成と、未来屋書店の客層が合っていたので自然に決まりましたね。それが特典内容にもつながっています。

    ―― なるほど。続いて売場づくりのお話を聞きたいのですが、「ココロ動かす本」フェアでは“感情”によって作品が分類されていて、一般文庫コーナーのなかに売り場がありますよね。

    松田:分類は、私たちエブリスタ側から提案しました。冒頭でお話しした作品特性にも通じるんですが、エブリスタの作品は多くの作家さんが“素人”の状態からスタートしており、読む側も、その作品を読み始めるとき「その作家を知っているかどうか」や「高い評価を受けているか」で判断しているわけではありません。

    「初めて見た作品だし作家の人も知らないけど、なんだか面白そうだから読んでみよう」から始まって、「面白かった!」という読書体験につながる。それをサイトだけではなくて、リアルな書店の場でも提案したかったのです。

    それと、ここ10年くらい感じている傾向として、「週3冊のペースを維持している」というような“ベテランの読者”がいる一方で、「泣きたい気分だから泣ける本が読みたい」というふうに自分の気持ちに沿って本を選ぶ人、もしくはそういう気持ちになったときに本を読むという人が増えているように思います。「お買い物ついでに書店に立ち寄って買う本」は、そういう本だったりしますしね。そういう意味でも、「どういうふうに“ココロ動かす”のか」という切り口を前面に出そうと思いました。

    ―― 一般的には、本の帯には「累計✕✕pv!」という宣伝文句が踊ることも多いですが、いわゆるランキング形式というわけでもなく。

    松田:そうですね。エブリスタ発の本に関しては、閲覧数と売上の相関がそこまで強くないんです。

    中道:実際にフェア開始以降、各作品の売れ行きにもそこまで大きな差はないですね。「このジャンルが抜群に売れている」ということもなく、全体的によく売れています。フェア対象作品でいうと『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』『京都寺町三条のホームズ』は人気シリーズですが、これだけが突出しているというわけでもありません。

     

    成長していく読者に“本のある暮らし”をどう提案するか?

    ―― 売り場に関してはどうでしょう? 実は取材前までは、一般文庫ではなくて、もう少し児童書売り場寄りにフェアコーナーがあるのかなと思っていたんですが……。

    中道:ラインアップには一部児童書も含まれていますが、小学校を卒業すると、“児童書売場”にはもう足を向けない印象を持っています。興味の対象が移るという側面もありますが、感情として「かっこ悪い」と思い始めるのかもしれません。今回は中高生向けの企画ということ、また「キャラクター小説」というジャンルに対する取り組みの取っ掛かりということで、通常の文庫小説と同じゾーニングにしました。

    ―― 最後に、若い世代に対して「書店に足を運ぶきっかけ」「本を読むきっかけ」をどう提案していくのか、考えを伺いたいです。中高生になっても「本を読む楽しみ」を選ぶ人が増えるよう売り手側がつなげていくこと、また、もう一度「娯楽としての読書」を始めるきっかけを作るということについて、未来屋書店のような「行動エリアに含まれている書店」は重要な存在だと思っているんですが。

    松田:地方の文学賞などを手がけているので地方に行く機会が多いのですが、訪れるにつけ、地方から書店がなくなっていくことが読書離れを助長していると実感しています。本を読む習慣がなくても、ふと足を運ぼうと思ったときに行ける場所がない、というのは深刻な問題です。知っている本や既に欲しい本を検索して購入するのであれば電子書店で十分ですが、知らない本と出会える「場」としては、棚を有するリアル書店の方が格段に有能です。

    中道:情報を得る手段としては、もう本は必須の存在ではないですよね。必要に迫られて手に入れる情報については、本以外の方がお金も手間もかからない。そう考えると、たとえば「自分が思ってもみなかった本との出会い」「こんな本があるんだという気づき」をどれだけ提案できるかということが、非常に大きな要素になってきます。

    未来屋書店は「Life with Books」、つまりお客さま一人ひとりに対して「本と共にある暮らし」を提案するというのをスローガンとして掲げているんですが、今回の「ココロ動かす本」フェアのような企画を実施することで、エブリスタに親しんでいる方には「エブリスタの本がお店に並んでいるらしいから行ってみよう」「サイトは見ていたけど、この作品は読んだことがなかったな」、逆に未来屋書店を普段から利用してくださっている方には「エブリスタっていうサイトがあるんだ」「見てみよう」というふうに、似ているけれど異なるフィールドにいて“結びついていないだけのもの”を、どれだけ結びつけられるかが今後重要になってくると思います。

    ―― フェアが始まったとき、SNSでエブリスタの作家さんたちが「未来屋書店でエブリスタのフェアが始まるよ」とお知らせしていたのが印象的でした。読者との距離の近さと、そのよさをあらためて感じましたね。

    松田:エブリスタの作家さんたちにとっても、自分たちの作品が本になることはもちろん嬉しいですが、それが全国の店頭に並んでいるというのはもっと嬉しいことなんだと思います。活動拠点としてのエブリスタに愛着を持ってくださっている方も大勢いて、自分の作品でなくても告知をしてくれたり、初日から店頭に足を運んでくださったりしていますね。地方の作家さんも多いので、全国展開している未来屋書店さんとご一緒できて本当によかったです。先ほどの「地方の書店を応援すること」にもつながりますしね。

    キャラクター小説の人気が大きくなり、これからもエブリスタからどんどん面白い作品が出ていきます。こういったフェアもぜひ第2弾、第3弾と展開していきたいです。

    (写真協力:未来屋書店/MIRAIYA Bookmark Lounge Cafe 碑文谷)

     

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