• 書店起点の地方創生 地元大学生はどうアプローチする?【バラバラ本 編】

    2018年11月15日
    本屋を歩く
    ほんのひきだし編集部
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    創業69年を迎えた山口県の老舗書店「文榮堂」と、山口大学の学生による産学連携の地方創生プロジェクト。

    前回の「大学側が感じた手応えと課題とは?」に続き、今回は「参加する学生たちは本や書店をどんなふうに見つめ、地方創生というテーマにどうアプローチするのか」を取材しています。

    今年プロジェクトに参加しているのは全部で6チーム。第1弾として、「バラバラ本」という企画を考えているチームに話を聞きました。

     

    本をバラバラにして「みんなで」読む

    ――さっそくですが、「バラバラ本」がどんな企画なのか教えてください。

    本をバラバラにして、皆で1冊の本を読むという企画です。ジャンルは推理小説で、文榮堂併設のカフェ「文榮堂珈琲」を利用した、4人1組で参加するイベントとしての展開を想定しています。

    ――「皆で1冊の本を読む」というのは、どういうことでしょう?

    まず、主催側が推理小説をいくつかのまとまりに分割します。それを参加者が分担して読み、自分が読んだ部分のストーリーを雑談形式で共有して、皆で一緒に推理をするんです。

    1冊の本を何人かで読むことで、犯人やトリックを見破るだけでなく、物語を理解していく過程や読んだ後の余韻を共有し、コミュニケーションそのものを楽しむこともできると考えました。補足情報なしに作品の一部分だけを読むことになりますが、理解できない部分もそのまま読み進めてもらいます。みんなで話していくうちに、自分の持っている情報がほかの人の情報とつながっていくのも、この企画の醍醐味です。

    友達同士で参加するのもいいですが、1人で参加すれば、ほかの参加者とチームを組んで取り組むことになります。初対面の人と読書を通してつながることができる点も、面白いのではないかと思っています。

     

    「本屋は何を売っているのか?」

    ――何に着想を得て、この企画を立てましたか?

    企画を考えるにあたって、まずは「本屋は何を売っているのか」という定義づけをしました。もちろん本や雑誌という商品を売っているわけですが、本を買うことで私たちは何を得られるのかということです。

    そこで出てきたのが、本を通して得られる“教養”、本を1人あるいは複数人で楽しむ“時間”、物語を自分が体験したものとして捉える“疑似体験”の3つでした。

    今回の「バラバラ本」は、そのうちの“時間”の視点で考えた企画です。本を読むことには、本自体を楽しむのはもちろん、「本を読んでいる時間を楽しむ」という側面もあると思います。プロジェクトのテーマである「本とつながる、本屋とつながる」についても踏まえたうえで、1人で読んで終わりではなく、本を読む時間そのものや、読んだ後の時間をほかの人と共有してみると面白いのではないかと考えています。

    ▼会場として想定されている文榮堂珈琲

    ――読む本を推理小説にしたのには、どんな理由があるんでしょう。

    企画内容を詰めていくうえでいくつかリサーチをしたんですが、本・雑誌の読者層や読んでいる本の傾向について調べたとき、推理小説の人気がもっとも高いということが分かりました。実際にチームのメンバーで「バラバラ本」をやってみたのですが、その際も推理小説が一番面白かったです。

    その場でチームを組んで参加するため「事前に読んでくる」ということができないのと、1つの作品を運営側が恣意的に分割して提供するという理由から、現時点では題材を著作権切れの作品で、比較的ボリュームの少ないものから選ぼうと考えています。実験段階では青空文庫を利用しました。

    ――となると、参加者がその作品をすでに読んでいる可能性もありますよね。

    そうですね、いわゆる“誰もが知っている名作”が題材になる可能性も高いです。でも、実際にやってみたとき、意外と細かいところを覚えていないということに気づいたんですよ。「あ、そういえばそういう話だった!!」「この作品を初めて読んだのは小学生のときで……」というふうに、さらに話が盛り上がるという新しい発見がありました。

     

    「読書」と「交流」のハードルを下げることで、気軽に参加してもらいたい

    ――読者の傾向のほかには、どんな調査をしたんですか?

    ほかには「コミュニケーションに関する調査」「山口市と山口商店街についての調査」を行ないました。

    「バラバラ本」の参加者は、初めて会う人とも会話しなければなりません。もし初対面の人と話すことに抵抗がある場合、それを取り除くような工夫が必要になると考えていました。結果として「大勢の前でのプレゼン」のような“主体的な発信”は苦手な人でも、人の話を聞くといった“受動的なコミュニケーション”は得意な人が多いことがわかりました。

    続いて「山口市と山口商店街についての調査」は、文榮堂本店のある山口市中心市街地に、どんな人がどんな目的で来ていて、どう思っているのかを把握するために行ないました。

    その結果、買い物目的で来ている人が多いにもかかわらず、店や商店街そのものに魅力を感じている人は少なかったので、「ほかに行くところがないのでとりあえず行っている」という状況なのかなと予測しています。ただし「駐車場が多いこと」を魅力の一つとして捉えている人が多く、どうやら近くに住んでいる人だけでなく、ある程度距離のあるところから来ている人も多いようです。

    最初はターゲットを市街地周辺の住民に限定しようかなと思っていたのですが、そうする必要はなさそうだと考えました。

    ――これが最後の質問となります。先ほど「読書時間そのものや、読んだ後の時間を共有して人とつながる」というお話がありましたが、「バラバラ本」の実現によってどんな結果・効果が期待できそうか、教えてください。

    推理小説が好きで、新しい楽しみ方を見つけたい、同じ推理小説好きとつながりたいという人はもちろんですが、普段あまり本を読まない人たちにも、書店に足を運んでもらえるようになると思います。

    たとえば映画なら「誰かと一緒に見る」ということができるので、見終わった後に感想を共有したり、意見を言い合ったりしますよね。でも本の場合、読むペースや読みたいタイミングも人によってまちまちなので、感想を言い合う機会が少ないんじゃないかと思っています。私自身、本を読んで「この感動をすぐ誰かに伝えたい!」と思っても、相手がいなくて結果的に自分の中に留めておくだけになることが多くて、少し物足りなさを感じていました。

    読んだ人たちと語り合える場が約束されていれば、より「本を読むのって楽しい」と思ってもらえるだろうし、逆に本を普段あまり読まない人にとっては、1冊を1人で読みきることに対するハードルが取り除かれて、気軽に読書に手を出せるのではないかなと思っています。

    ――ありがとうございました!

     

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