• 書店起点の地方創生 地元大学生はどうアプローチする?【ラブレター 編】

    2018年11月17日
    本屋を歩く
    ほんのひきだし編集部
    Pocket

    創業69年を迎えた山口県の老舗書店「文榮堂」と、山口大学の学生による産学連携の地方創生プロジェクト。

    前回の「大学側が感じた手応えと課題とは?」に続き、今回は「参加する学生たちは本や書店をどんなふうに見つめ、地方創生というテーマにどうアプローチするのか」を取材しています。

    今年プロジェクトに参加しているのは全部で6チーム。第2弾では、「BOOKS’ LOVE LETTER」「BOOK TREE」という2つの企画を考えているチームに話を聞きました。

     

    “贈り物としての本”に着目

    ――まずは「BOOKS’ LOVE LETTER」「BOOK TREE」それぞれの内容を、簡単に教えていただけますか?

    「BOOKS’ LOVE LETTER」は、学校にあるような靴箱を使って本やラブレターのやりとりをし、“キモチのプレゼント交換”をすることで誰かとつながるという企画です。

    もともと文榮堂を知っている人(=既存顧客)をターゲットにした企画ですが、幅広い世代に楽しんでもらえるのではないかと思っています。

    ▼「BOOKS’ LOVE LETTER」のイメージ

    使い方
    ① 靴箱の名前札に、靴箱の利用期間やニックネームを書く。その際、性別やそのときの心情、「こんな本がほしい」「こんな本が好き」といったメッセージも自由に記入する。
    ② その靴箱に興味をもった人や、その人に本をプレゼントしたいと思った人が、店内の商品から本を選んで靴箱に入れる。
    ③ 本を入れるとき、(可能であれば)その人に対するメッセージをラブレターに書いて、本と一緒に靴箱に入れる。
    ④ 名前札の主は、後日店を訪れたとき、靴箱に入ったラブレターを受け取ったり、入っている本を購入したりできる。

    「靴箱をあけたら手紙やプレゼントが入っている」という出来事に、甘酸っぱい感情を抱く人は多いのではないでしょうか。「学校を思わせるシチュエーションが、青春時代を想起させるのでは」という意図から、靴箱や黒板を使うことにこだわっています。

    「BOOK TREE」は、本を“果実”に見立てた来店客参加型の企画です。期間ごとにテーマを設けて、お客さんがそのテーマに沿った“実”を木にならせたり、なっている実を収穫したりして、本を選ぶ楽しみや、新しい本との出合いを体験してもらいます。

    実物の本を木に吊るしたいところですが、それは難しいと思うので、紙に書いて飾ったり、クリスマスツリーのオーナメントのようなプレゼントボックスに入れて飾ったりする案を検討しています。

    ――「BOOK TREE」も、想定ターゲットは既存顧客でしょうか。

    実をならせる側は既存顧客のほうが多そうですが、収穫する側については、ふと立ち寄った地域の方や観光客に参加してもらえるような方法を考えています。

    ――ターゲットやアプローチ方法は異なりますが、本を“贈り物”と捉えている点が共通していますね。

    企画を考えるうえで文榮堂本店の現地調査を行なったのですが、その際に中高年のお客さんが多いことに気づいて、「孫や子どものために本を買いにきた人も多そうだ」「プレゼントという着眼点はどうだろう」と考えたんです。

    「プレゼントに本を贈る」ということ自体がとても素敵なことだと思いますし、受け取る側も、単に「おすすめです」と紹介されるより、身近な人から「面白かったよ」「あなたに読んでほしい」とすすめられたほうが、読む動機づけとして強いのではないかと思います。また、普段書店を利用していても「本を贈る」というコンセプトの企画は見かけないので、やってみようと思いました。

     

    知らない誰かとの交流が、さらに新しい交流を生む

    ――続いて「BOOKS’ LOVE LETTER」から、くわしくお話を伺いたいと思います。この企画は“ときめき”が重要なキーワードになっているそうですね。

    現地調査のときに、おしゃれでかわいい小物がたくさん置いてあったのが強く印象に残っていました。自分用にもほしいし、プレゼントにもぴったりなものばかりで目移りしてしまって(笑)。こういう「素敵なものを選んでいるとき・見ているときのときめき」という要素を、本にも乗せられないかなと考えたんです。

    先ほど「プレゼントに本を贈るということ自体が素敵だ」といいましたが、人からプレゼントをもらうことって、すごく嬉しいですよね。なぜかというと、そこには自分を思って選んでくれたという“キモチ”が存在しているからです。

    もし本をプレゼントするとして、それにはどんなキモチが込められているのだろうか。「面白かったからあなたも読んでみて」というキモチもあるだろうし、子どもや孫に向けたものなら「こんな子に育ってね」という願いも込められているように思います。そういうキモチや、自分の足と目を使って選ばれたプレゼントには、機械的なレコメンドにはない“人と人の心が触れ合う温かさ”があります。だから心が動かされ、ときめきを覚えるのだと思っています。

    こんなふうに“ときめき”を深掘りした結果、「思いを届ける=ラブレター」という発想にたどり着き、だったらどんな世代も甘酸っぱい感情を抱きそうな靴箱がいいな、と考えたんです。

    この企画では知らない人から本やラブレターが届く可能性も高いですが、それも青春時代を思わせますよね。「どんな人が選んでくれたんだろう?」「誰かはまだわからないけど、ありがとう」というふうに、“単なるやりとり”で終わらないところも魅力かなと思っています。

    ――贈った側・贈られる側の両方にとって、「そろそろ届いたかな?」とたびたび足を運ぶきっかけにもなりそうです。

    現地調査をしたときの所感として、ギフト用の雑貨が充実しており、併設されている文榮堂珈琲もカフェとしての質が高い一方で、その個性がうまくお客さんに伝わっていないのではないかと感じました。

    「BOOKS’ LOVE LETTER」は、文榮堂珈琲内での展開を想定しています。企画を実現させることで、普段通りの本の購入だけでなくカフェやプレゼント選びの利用につなげれば、その点も訴求できるのではないかなと思っています。

     

    書店を「地域のシンボル」に

    ――「BOOK TREE」に関しては、通りがかりの人や、観光客もターゲットに含めるということでした。その点はどのように工夫しますか?

    木を店内ではなく外に設置して、待ち合わせ場所のシンボルとして使えるようにするのが一番いいだろうなと思っています。2メートル前後のクリスマスツリーを購入できたら、商店街を歩いている人の目にも留まりますよね。

    また、「BOOKS’ LOVE LETTERと連動させるのはどうか」ということについても検討しています。さきほどお話にあったように、2つの企画は「本をギフト、プレゼントとして捉える」という点が共通していますが、どんな本を選ぶかが「BOOKS’ LOVE LETTER」では各個人の自由であるのに対し、「BOOK TREE」ではみんな同じテーマのもとで本を選びます。

    参加のしやすさ、参加してくれた方の個性の出かたが異なると思うので、「外にあるツリーでまずお店に興味を持ってもらう」「店内に入ってもらう」「靴箱を通して交流が生まれる」という流れを、それぞれの企画の特性は崩さずに生み出せないかなと考えています。


    ――それでは、最後の質問です。「BOOKS’ LOVE LETTER」「BOOK TREE」それぞれの企画が実現することで、どのような結果・効果が期待できそうですか?

    まず、どちらの企画も長期的に展開できる企画だと思います。

    また、どちらもお客さん同士の交流を生む内容です。本そのものには興味がない人にも、その場所を通して人がつながり、同じ空間のなかでさまざまなキモチが交わっていることを感じれば、参加してみたいと思ってもらえるのではないでしょうか。本を選んだり読んだりすることが、自分1人だけで完結しないこともあるのだと体感することで、書店が「本を売る/買う」だけの場所でなく、ときめきがあふれる場所に変化していくのではないかと考えています。

    また「BOOKS’ LOVE LETTER」については、ラブレターをくれた人や、本を選んでくれた人に対するお礼や感想を書いて、貼れるコーナーがあったらいいなと思っています。メッセージカードを貼り集めて1つのアート作品になるようにすれば、企画の訴求力がより高まりますし、それをきっかけに本に対して興味を持つ人が現れるのではないかと思います。

    ――ありがとうございました!

     

    関連記事

    山口の老舗書店と地元大学生による地方創生プロジェクト 今年は6チームが参加




    Pocket

  • すばる舎_スマホ記事下

    abareru20181201
  • GoogleAd:007



  • ページの先頭に戻る