• 純文学を勧めるのはむつかしいけど……それでも推したい『塔と重力』―わが店のイチオシ本(vol.10 KDM.txt 守山店)

    2018年01月16日
    本屋を歩く
    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
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    全国の書店員さんが一押し本を紹介する連載「わが店のイチオシ本」。第10回に登場いただく書店員さんは、名古屋市にあるKDM.txt 守山店の野々上大三郎さんです。

    実は作家でもある野々上さん、お店では文芸書を担当されています。イチオシ本は純文学作品。上田岳弘さんの『塔と重力』です。

    塔と重力
    著者:上田岳弘
    発売日:2017年07月
    発行所:新潮社
    価格:1,728円(税込)
    ISBNコード:9784103367345

     

    野々上大三郎さんは、第3回集英社ライトノベル新人賞で特別賞を受賞した『棘道の英獣譚』でデビュー。同作は集英社ダッシュエックス文庫より発売中です!

    棘道の英獣譚
    著者:野々上大三郎
    発売日:2017年03月
    発行所:集英社
    価格:648円(税込)
    ISBNコード:9784086311762

     

     

    純文学を下手に語ると、脳内の〈純文学警備隊〉に睨まれる!?

    当店は、2017年の3月に開店した新参者でございます。両親は岐阜・愛知で長らく書店を営んでおります「カルコス」と、同じく岐阜・愛知で文具店をやっております「KDM」です。それら二つの要素を併せ持つ、白くて角張った乳児が「KDM.txt守山店」なのです。

    ▼KDM.txt守山店の外観

    それでは、当店のイチオシ本をご紹介。上田岳弘さんの著作『塔と重力』です。

    純文学を勧めるのって、いつもひやひやします。下手なことを言うと、「アナタ、何もわかってないのね」と笑われるんじゃないか。そんなことを考えて、ちょっと口が重くなる。POPを書く手もふるえてきます。

    もちろん、SFやファンタジー、ミステリーだってしっかり論じようと思うとむつかしい。でも、SFとかって「ここが面白かった!」は言いやすい気がします。肩肘張らず、言えちゃう感じ。それでも許される感じ。

    ところがどっこい、純文学になると脳内の〈純文学警備隊〉が、眼光鋭く睨んできます。

    あれですか。「純」って言葉が無闇にハードルを上げているわけですか。なるほどなるほどそうですか。それじゃあ、ライトノベルは「ライト」なわけですな。おうおう、雑なラノベ語りは〈ラノベ警備隊〉が黙っちゃいねぇぜ。いやそもそも小説の読み方に正誤をつける現代の国語教育の在り方が――ああああああダメダメ! 中止中止!

    とまぁ、いろいろ自意識過剰に考えちゃうんですが、それでも推したい一冊です。

     

    強烈な読後感、破壊力のある一冊

    内容は、私たちの今と未来の話。これが実にスルスルと読めてしまうのです。一文ごとのまとまりがいいからなのか、出てくる単語が愉快だからか。けれど、単純明快な物語かといえば、然にあらず。世界を切り取る高感度の言葉が、私たちの意識を遥かに高く、遠い座標へと突き上げてくれます。そして、読後がやってくる。高く上った意識は、自由落下の餌食です。精神の位置エネルギーが、重力加速度による強烈な読後感を与えてくれます。

    というわけで、大変に破壊力のある一冊なのです。

    あら、なんのこっちゃわからない? 読めばわかります。わかっていただける気がします。たぶん。きっと。なので、その、読んでいただけませんでしょうか……?

    当店では、〈2017年のイチオシ〉として展開中でございます。オススメです!

    ◆作り手からのメッセージ◆
    SNSでなんでもわかってしまうのに、自分は実際には何にもできない――。そうした感覚に心当たりのある方は、多いのではないでしょうか。上田岳弘さんはデビュー作『太陽・惑星』から一貫して、技術革新が進んだ先に待つ、人類のしあわせについて問い続けているのだと思います。(新潮社 出版部 加藤木礼さんより)

     

    店舗紹介

    KDM.txt 守山店(Tel.052-715-3377)
    〒463-0003 愛知県名古屋市守山区下志段味南荒田2300-1
    ※営業時間 10:00~22:00


    (「日販通信」2018年1月号「わが店のイチオシ本」より転載)




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