• カレー×文学はベストセラーを生み出す組み合わせとなるか?―「curry book project」vol.3レポート(前編)

    2017年04月05日
    本屋を歩く
    ほんのひきだし編集部 浅野
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    2016年12月7日(水)に文禄堂高円寺店で開催された「Curry book project」vol.3。

    又吉直樹さんの『火花』、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』と、2年連続で芥川賞受賞作を編集した文藝春秋の浅井茉莉子さんをゲストに、カレー研究家の水野仁輔さんが「カレー本のベストセラー」を生み出すための公開企画会議を行いました(イベントの詳細はこちら)。

     

    カレー×文学はベストセラーを生み出す組み合わせとなるか?

    水野仁輔(以下、水野)今回のカレーはビーフカレーです。スパイスは『まぼろしカレー』の表紙になったビーフカレーの調合をバージョンアップさせたもので、これは「AIR SPICE」でもセットとして販売しています。

    打ち合わせの時に浅井さんは神保町のエチオピアがお好きだと聞いて「エチオピア風にします」と言っていたんですが、結局エチオピア風にはしませんでした(笑)。

    浅井茉莉子(以下、浅井)でもすごくおいしかったです!

    ▼ほんのひきだし編集部もおいしくいただきました。

    AIR SPICE「まぼろしカレー ビーフ」のスパイスセットはこちら

    水野:僕、イベントの時は荷物が多いのでいつもタクシーを使っていて、今日もタクシーで来たんですが、乗る時って炊飯ジャーをトランクに入れて、後部座席の自分の隣にカレーのトランクを置いているんですよね。すると、蓋を閉めてはいてもタクシーの中に匂いが漂ってくるじゃないですか。「カレーのいい匂いがしますね」と言ってくれる方もいるんですけど、今日のタクシーの運転手さん、何も言わないんですよ。

    気を遣ってくれてるのかなと思いながら来たんですけど、最後に到着して、トランクから炊飯ジャーを出してもらった時に「いい匂いがしますね」って。ライスの匂いを嗅いでですよ(笑)。そういうわけなんで、今日はカレーよりライスの方がおいしいかもしれないです。ちなみに昔、カレーを運んでもらってて「いい匂いですね、お寿司ですか?」って聞かれたこともあります(笑)。

    浅井:その運転手さんにとっては、カレーの匂いをお寿司だと思ってしまったっていう、不思議な思い出になっているかもしれないですね(笑)。

    水野:ということで、今日のイベントのテーマは「あなたのカレーの思い出を教えてください」です。どこかで浅井さんのカレーの思い出も聞きたいなと思っています。でもさっき、司会の方がすごいこと言っていましたよ。「カレーと文学の可能性を探る」とか。まあ、このイベントで「カレーと文学の可能性を探れる可能性がある」ということになるのかもしれないですね。

    浅井:そうですね(笑)。

    水野:今回、こういうテーマになった理由も含めて話していけたらと思うのですが。このイベントでは毎回ベストセラーを手掛けた編集者の方とお話ししていて、1回目はビジネス書、2回目は実用書、3回目が今回の文学ということになります。なんとなく、ビジネス書や実用書はカレーと接点がある気がするんですけど、文学ってどうなるんだろう。浅井さん、今回の依頼内容を聞いてどう思いました?

    浅井:まずカレーが好きですし、水野さんにもお会いしたいなと思ってありがたくお引き受けしました。それに、2016年4月にちくま文庫で復刊された阿川弘之さんの『カレーライスの唄』が、読んでみたらとても面白かったので、カレーと文学って相性いいんじゃないかなと思います!

    カレーライスの唄
    著者:阿川弘之
    発売日:2016年04月
    発行所:筑摩書房
    価格:1,026円(税込)
    ISBNコード:9784480433558

    水野:『カレーライスの唄』、いいですよね。僕が読んだのはだいぶ前なのですが、一言でいうとカレー屋を開くまでのお話で。

    浅井:もともと新聞で連載されたものなんですよね。水野さんがおっしゃった通り、主人公がカレー屋を開くまでの話なんですが、彼の勤めている出版社が潰れるっていうところから始まっていて、もうその時点で胸が痛いです。

    水野:それが今、復刊されるっていうね。

    浅井:「もう私もカレー屋になったほうがいいんじゃないか?」って思いながら(笑)。でも、最後のほうまでなかなかカレーライス屋にならないんですよ。分厚い本なんですけど。

    水野:表紙にドーンとカレーがあるから、いつカレーが出てくるのか期待して読みますよね(笑)。

     

    浅井さんの手掛けた本を見てみよう

    火花
    著者:又吉直樹
    発売日:2017年02月
    発行所:文藝春秋
    価格:626円(税込)
    ISBNコード:9784167907822

    水野:「カレーというテーマで、ベストセラーの本が作れるんだろうか?」っていうところを議論するのがこの企画なんですが、ちなみに(又吉直樹さんの)『火花』って、何万部でしたっけ。

    浅井:258万部です。

    水野:僕の本とゼロが2つ以上も違う!! カレー本の世界から見ると天文学的な数字なわけですが、著者は僕じゃなくてもいいので、そういうベストセラーがカレーで出せる可能性があるのかっていうところを探りたいんですよね。ちなみに手掛けた本が250万部も売れるっていうのは、どんな気持ちなんですか?

    浅井:うーん……。実は「あ、売れてるんだな」っていう、ちょっと自分とは遠いところにある感じです。でも色んな人に「読んだよ」と言ってもらえたり、いつも本を読んでない人に手に取ってもらえているというのは純粋に嬉しいです。

    水野:想像もつかない。ちなみに250万部売れた経験があると「50万部は普通だな」って思うようになるんですかね?

    浅井:いえいえ、『コンビニ人間』が50万部を突破した時は、とても興奮しました。

    コンビニ人間
    著者:村田沙耶香
    発売日:2016年07月
    発行所:文藝春秋
    価格:1,404円(税込)
    ISBNコード:9784163906188

    水野:そういう時、浅井さんってどういう感じなんですか?

    浅井:私は実感が伴うまで時間がかかるので、後から嬉しさがじわじわこみ上げてくることが多いですね。

    水野:僕は「嬉しすぎて飲み明かしちゃうだろうな」「街に出て行って大騒ぎしたくなっちゃうだろうな」って思っていたんですけど。作家さんのほうは、どうなんでしょうね。

    浅井:そうですねえ……謙虚に受け止めている方が多いと思います。でももちろん多くの方に読んでもらえるのは嬉しいでしょうし、売れれば新しい作品を書ける可能性が増えていき、自分の好きなものが書けることに繋がるとも思います。

    水野:なるほど。レベルは違うけれど、僕はカレーの本をたくさん出している中で、「重版する」ってことをノルマにしているんですよ。なので、それをクリアできた時に「良かったな」って思うんですよね。「一緒にお仕事をしてくれた人に、恩返しができた」っていう。逆に一緒に作った本が重版しなかったら、その編集者さんとは、申し訳なくて疎遠になってしまう。

    浅井:それ、編集者からするととても辛いです……。

    水野:僕もすごく悲しいんです。普通に会いたいんだけど、こっちからなかなか誘えない。だから、もし100万部も売れたら、僕は担当してくれた編集者さんだけじゃなくて、その部署ごと連れて飲みに行くぞ!っていう気持ちになると思うんですよね。

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