• 「本屋が厳しい」といわれる今、本屋の定義を考える(「本屋をリブートするには」vol.1 レポート)

    2016年09月07日
    本屋を歩く
    ほんのひきだし編集部 浅野
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    3月末に文禄堂高円寺店にて、numabooks代表の内沼晋太郎さん、Title店主の辻山良雄さん、久禮書店〈KUREBOOKS〉店主の久禮亮太さんを招いてトークセッション「本屋をリブートするには」が行われました。既存の枠組みを超えて“本”や“本屋”のあり方を再定義する動きの、最先端にいる3人による鼎談。本屋がリブート(再起動)するには、一体何が必要なのでしょうか?

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    観光客と地元民、どちらに愛されるのか

    本屋に限らず、お店に来るお客さんには「近くに住んでいる人」と「遠くから来た人」、大きく2種類の人がいます。遠くから来た人はお店に行くこと自体が一つの目的ですが、近くに住んでいる人は大抵、そうでないことのほうが多いです。それでは新しく本屋を始めるとき、「近くに住んでいる人」と「遠くから来た人」のどちらに愛されるのがよいのでしょうか。

    numabooks代表の内沼晋太郎さんが手がけたビールの飲める本屋「B&B」は、下北沢という「近くに住んでいる人」と「遠くから来た人」が混在している土地にあります。出店当時の下北沢には、すでにヴィレッジヴァンガードの東京進出1号店がありました。内沼さんは「ヴィレッジヴァンガードが果たしている(サブカルチャー的な)役割は担わなくていい」と考え、B&Bではそれ以外の要素をカバーできるようにコンセプトを作ったのだそう。同じく内沼さんがアドバイザーをつとめたHMV&BOOKS TOKYO(東京・渋谷)については、入居している渋谷モディの「渋谷のまちづくりに貢献したい」という思いを踏まえ、「観光客」「地元民」という分類ではなく“渋谷で育まれた文化に思い入れのある人たち”に「渋谷にこういう本屋ができて嬉しい」と思ってもらえるような店作りをしようと考えたのだそうです。

    一方、辻山良雄さんが㈱リブロ退職後に立ち上げた書店「Title」は、地元の方と遠方からのお客様の割合が半々くらいとのこと。売上の観点からは、遠方からのお客様のほうがたくさん本を買っていってくれるそうですが、どちらのお客さんのほうが大事ということではないようです。「地元の人にとって、近くにある本屋というのはありがたいものではなく“当たり前の存在”である」とおっしゃっていました。

     

    新しい本屋のあり方(1):本屋でも図書館でもない“第三の道”

    内沼晋太郎さんが現在開設に向けてディレクションしている「八戸ブックセンター」は、青森県八戸市の直営で、本の販売を行う施設です。市の直営施設と書店との違いは、どこにあるのでしょうか。

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    八戸ブックセンター設立の背景には、八戸市の小林市長が掲げた公約「本のまち八戸」があります。赤ちゃんを対象とした「ブックスタート」、小学生を対象とした「マイブッククーポン」に続く3つめの事業として、「八戸ブックセンター」の開設が計画されていました。八戸市は書店ゼロの地域ではありませんが、経営が厳しい中、ニーズに合わせた品揃えをしていると、どうしても人文書や自然科学書、海外文学、芸術書などが棚に並ばなくなってきます。そうした民間では担いにくい領域をカバーし、八戸に暮らす人たちに興味を持ってもらえるような取り組みを行っていくことを通じて、「本のまち」として読者や書き手を育てていくためのハブとなるような施設にしたいと考えました。

    一方、行政が運営する本にまつわる施設として、図書館の存在が挙げられます。図書館の役割は、地域の歴史的資料や、個人での入手が難しい高価な本といった必要な資料を収集・整理・保存して公開し、人々の教養や生活を豊かにすること。八戸ブックセンターは「本を読む人を増やす」「本を書く人を増やす」「本で街を盛り上げる」を3つの基本コンセプトとし、それらは本来、図書館の第一義ではないはずだという考えで、役割分担がなされています。計画されているのは、読書会のためだけの部屋、カンヅメになって執筆活動をするための貸しブース、装丁や印刷などの工程を見せる展示など。作ることから買うこと、読むことまでの全体を落とし込んだ“本に関する体験”ができる空間になりそうです。

     

    新しい本屋のあり方(2):書店開業に対する思い込みを逆手に取る

    本屋に限ったことではありませんが、新しくお店を始めるにはまとまったお金が必要です。出版業界では長らく、「新しく本屋を始めたいが、立地条件と必要資金を考えると難しい」「既存の書店ですら経営を続けるのが難しいと言われているのに、新しく本屋など始められるわけがない」と思われてきました。

    しかしTitleの辻山さんはそんな“一般的な感覚”を逆手に取り、実質の売上に見合った資金で開業するという方法で「Title」を始めました。駅から徒歩12~3分のため家賃が相場より安く、基本的に奥様と2人で営業されているそうで、人件費も抑制。その代わり多少駅から遠くても来てもらえるように、ギャラリーを作る、Titleでしか買えないような商品を扱う、地元に住む人々の需要も品揃えに反映させるといった工夫をしているのだそうです。

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    「確かに本屋を始めるのは簡単ではない」「ただ、誰も本屋を少なくしたいとは思っていない」という辻山さんの言葉が印象的でした。

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